第四回
  「信頼残高」
企 画 社団法人千葉県臨床検査技師会
協 力
株式会社リクルートマネジメントソリューションズ
HRDソリューションBU コヴィーグループ

二人以上の人が集まると人間関係が発生します。
例えば仕事の場面では上司・部下との関係、同僚との関係、取引先との関係etc.、そして家庭内でも親子関係、夫婦関係など。私たちは日々様々な人間関係を抱えながら活動しています。

前回、その人間関係の原則は“信頼”である、とご紹介しました。
でもいったい・・・、信頼はどのように築き上げられるのでしょうか?
今回は人と人との信頼について考えてみたいと思います。

「7つの習慣」では人間関係の信頼を銀行口座に例えています。

【信頼口座】
私達は人間関係において、自分名義の信頼口座を開設し、100人と付き合っていれば、100の取引先を抱えています。その信頼口座の取引明細は、自分が相手に言ったこと、行なったことです。そして通帳に記載される明細の一つ一つは、信頼の預け入れ(+)、引き出し(―)です。

預け入れ(+)とは信頼を築いたり、時にはその人との関係を修復する行為です。逆に引き出し(―)とは、信頼を低下させる行為そのものです。そして、足したり引いたりした結果、その残高が【信頼残高】です。

それでは信頼残高に影響を及ぼす行為はどんなことでしょうか?(図)
“約束を守る”を考えてみましょう。
たとえどんな小さな約束でも一つ一つ守ることで信頼は貯まります。そして大切なのは“都合がいいから約束を守れる”というのとは違うということです。

例えば2週間前から部下と食事の約束をしていたとします。業務時間ではゆっくり話もできないので、たまには居酒屋でお酒でも飲みながら話そうか、と。もちろん部下もその時を楽しみにしていました。しかし当日の朝、突然「今夜、一緒に食事でもどうかね?」と上司の○○部長から声がかかりました。その時あなたはどちらを選択しますか?「申し訳ない、ちょっと○○部長から誘われて・・・、日を改めてくれないか?」と部下に言い、約束を延期してしまいますか?(もちろん○○部長の案件にもよりますが)
でも、延期された部下の気持ちはどうでしょうか?
しかし○○部長のお誘いを断り、自分に時間を充ててくれた・・・、と後々知った部下はきっと嬉しいに違いなく、あなたを信頼できる上司だと慕ってくれるのではないでしょうか?
“都合がいいから約束を守れる”、のではなく都合が悪くなった時にこそ、約束を守ることは大きな預け入れの行為です。

引き出しに“二面性”とあげました。
「○○さんってさぁ、全く勝手だよ。僕達の立場や気持ちを無視して、全く頭にくるよなぁ」と、その場にいない人に対して、ああでもない、こうでもないと、悪口や不満を言い合っている場面に居合わせたことはないでしょうか?
自分もその会話に参加していると、なぜかお互い同士が信頼で繋がっている気分になります。果たして本当にそうでしょうか?実は会話に参加している人同士で信頼の引き出しをし合っているのです。あなたが居合わせてない別の場面では、ひょっとしたら・・・、悪口の対象があなた自身になっていることだって?あるのです。もし居合わせてしまったら同じ輪の中に入らずに「それならこれこれ、こうしたらどうだろうか?○○さんが問題なら、本人に直接言ってみたらどうだろうか」と主体的になってみたら如何でしょうか?その場にいない人に忠実になり、誠実に臨む態度は預け入れの行為です。なかなか言いにくいかもしれませんし、その時は引き出しの行為に感じます。でもそんなあなたの誠実さは、先々では大きな信頼に繋がっているはずです。あの人はオモテ、ウラのない人だ・・・と。こっちではいい顔をし、はたまたこっちでは・・・、といった二面性は人間関係において大きな引き出しです。

“謝る”、これも信頼の預け入れに繋がります。
人は誰でもミスを犯します。ミスそのものは引き出しですが、重要なのはその後にどんな態度や対応をしたかです。預け入れと引き出しの分かれ目であり、真価が問われます。ミスを犯したにもかかわらず、責任回避すべく、言い訳ばかり、さらに一番やってはいけないこと、それは・・・、犯したミスを更に隠そうとすることです。それはとっても大きな引き出しです。私たちは他人の犯したミスそのものよりも、その後にどんな態度をとり、どう対応したかが、案外記憶に残るのではないでしょうか。

こうしてみると、どの預け入れの行為にもそれに対応した引き出しがあります。

ここで、皆さんの大切な人を思い浮かべてみて下さい。
その人との信頼残高はプラスですか?マイナスですか?ひょっとして破綻状態?
身近なそして大切な人にほど、知らず知らずのうちに小さな引き出しをしているものです。
これくらいならいいだろう、大丈夫だろう・・・と。でも気づいたら“時、既に遅し”、関係を修復できない位の事態になっているかもしれません。
そんな事態になる前に、ちょっと振返ってみて下さい。

銀行預金の引き出しはあっという間です。でもボーナスで一気に残高を増やすことは可能です。(確率は低いですが)宝クジに当たる!というのもあります。
しかし人間関係の信頼残高というものは、一気に、劇的に増やす得策はありません。たとえ些細な引出しでもそれを修復するのには、時間をかけ、コツコツと忍耐強く、預け入れするしかありません。

「7つの習慣」の著者コヴィー博士はこのように言っています。
『行動で作った問題は、言葉では解決できない』と。

  -------この内容は、フランクリン・コヴィー・ジャパン「7つの習慣」トレーニングプログラムに基づいて表現しています-------


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