第37回関東甲信地区医学検査学会 2000.10.14-15

ead-p Tilt 試験中、冠攣縮性狭心症発作を認めた1

 

○篠崎麻紀 吉岡佐知子 並木薫(埼玉県済生会栗橋病院 臨床検査科)
宇都健太(同内科)

 

【はじめに】

冠攣縮発作は、近年、自律神経の関与が示唆されている。今回、神経調節性失神を誘発させるHead-p Tilt (以下HUT)試験中、冠攣縮発作を認めた1例を経験したので報告する。

 

【症例】

60歳女性。主訴は失神。喫煙歴が3520 /dayで、家族歴は母親が徐脈性不整脈である。数年前より一過性に心窩部痛が出現し、3年前に電車内で前失神発作を起こしていた。平成116月検診で不整脈を指摘され、ホルター心電図でPVCと洞停止が認められた。同年9月精査治療目的で当院紹介となる。生化学データ上、中性脂肪のみ 286 r/dlと高値であった。入院中施行したホルター心電図で、PVC32673/dayと洞停止2.6秒を認めたが、失神や胸痛及びST変化はなかった。神経調節性失神も疑われ、HUT試験を施行したところ、イソプロテレノール負荷HUT80°10分後、心電図上UVaF誘導にST上昇及び胸痛発作が出じたが、硝酸薬静注にて軽快した。後日施行した冠動脈造影で右冠動脈に軽度の狭窄を認め、冠攣縮の関与が示唆された。また電気生理学的検査で洞機能不全を認めた為、ペースメーカ―を植え込んだ。

 

【まとめ】

今回、HUT試験で偶然ST上昇発作を認め、冠攣縮性狭心症の診断のきっかけとなった症例を経験した。HUT試験は自律神経調節機構に作用し、徐脈・血圧低下を惹起し失神発作を誘発する検査である。本症例は、同試験により自律神経バランスを崩し、冠攣縮発作を生じたものと考えられた。

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