第37回関東甲信地区医学検査学会 2000.10.14-15

大腸癌におけるテロメラーゼ発現とそのp53、Ki-67との関連

 

                 池田 聡、木村 博、本間恵美子(総合病院土浦協同病院病理部)

 

【はじめに】

TRAP法によるテロメラーゼ活性測定は新たな腫瘍マーカーとして期待がもたれ様々な研究がなされている。しかし、TRAP法はPCRを基本としているため、病理学的には形態的な要素を損なうことなく検出できる方法の一般化が望まれている。今回我々はテロメラーゼの触媒サブユニットであり活性とよく相関すると言われるtelomerase reverse transcriptaseTERT)についてその蛋白を免疫染色で検出し、In situ hybridization法で検出したTERTmRNA発現との相関を確認するとともに進行大腸癌におけるTERT蛋白とp53Ki-67との関連について検討したので報告する。

 

【対象及び方法】

TERTの蛋白とmRNAの相関については24例の進行大腸癌生検組織を用いた。p53Ki-67との関連は手術により摘出された31例の進行大腸癌を用いた。この31例については各例24視野を選択し、計97視野における発現を観察した。

 

【結果及び考察】

TERT蛋白は核に陽性であったが、癌組織では細胞質に瀰漫性に発色が見られ、今回これを陽性所見とし検討を行った。生検組織におけるTERTの蛋白とmRNAの発現は概ねその局在が一致した。手術検体におけるTERTは31例中29例(93.5%)で陽性所見があり、これを各例2〜4視野に分けて観察するとp53が陽性の視野ではTERTも陽性のことが多く(χ2-test p<0.01)、Ki-67による細胞増殖率もTERT陽性の視野で有意に高値を示した(t-test p<0.005)。これらのことよりTERT蛋白は恒常的に発現しているのではなく、p53の陽転や細胞増殖率の高値化等の、悪性度の亢進に関連して強く発現していることが示唆された。    

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