第37回関東甲信地区医学検査学会 2000.10.14-15

臍帯血中のTSHの値について

 

○森 修治1)畠山良紀1)佐々木憲裕2)河田 誠3) 大和田達代4)
(川崎製鉄健康保険組合千葉病院 検査科1)内科2)産婦人科3)看護部4)

 

【目的】

臍帯血中のTSHの血中レベルについて調べたので報告する。

 

【対象】

当院で正常分娩により得られた50人の臍帯血およびその分娩2日後の母体血。

 

【方法】

分娩時に得られた臍帯血の甲状腺ホルモン(FT3、FT4、TSH)と生化学項目、CRP、コルチゾールなどを測定した。同患者の分娩2日後の母体血も同様の項目と血算を測定した。分娩に関しては分娩経過やアプガールスコア、在胎日数、出生時体重を調べた。以上の項目について臍帯血中のTSHとの関連の有無を調べ、同時に臍帯血の甲状腺ホルモンの基準値を算出した。

 

【使用機器】

甲状腺ホルモン:AIA−21(東ソー) 生化学検査:TBA80FRNEO(東芝)

 

【結果】

母体血に対し臍帯血のTSHは母親が1〜8であったのに対し2〜26と幅広い分布と基準値を示した。また生化学検査における臍帯血の特記事項として全体に低脂値症、低分子窒素化合物の高い相関などであった。今回の測定項目にてTSHに影響をおよぼす項目は見出せなかった。

 

【考察】

新生児のTSHレベルは出生時の寒冷刺激などにより出生後約1時間で急激に上昇するという報告がある。臍帯血中のTSH測定値に個人差が出るのはこの為と思われ、母体の状態や血液成分には依存しない様である。これはTSHが胎盤をほとんど通過しない事を示唆している。一方、新生児の出生時間と臍帯血の採取時間を一定にする事は無理がある。従って個々の臍帯血中のTSHのバラツキを回避するのは困難で一定の日数が経過した後の新生児の採血の方がスクリーニングには有用と思われる。

 

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