第37回関東甲信地区医学検査学会 2000.10.14-15

フィシン法(ビーズカラム凝集法)のみに陽性となった不規則抗体の検討

 

○高野喜代美 並木浩信 野田裕子 石野たい子 川平宏   

 星野茂角 田中博 伊藤武善(日本大学板橋病院 輸血室)

         

【目的】

当院は2000年4月より不規則抗体検査に試験管法によるポリエチレングリコールを用いた間接抗グロブリン試験(以下PEG)に加えて、ビーズカラム凝集法によるフィシン法(Ortho Auto Vue System)を導入した。今回我々は、各々の不規則抗体検出率を調査し、フィシン法のみで検出される不規則抗体について検討したので報告する。

 

【対象および方法】

41日から531日までの2ヶ月間に交差試験用血液として提出された477患者(878検体)を対象とし、PEG法およびフィシン法による不規則抗体検査を各々の説明書に従って実施した。

 

【結果】

1.フィシン法のみ陽性を示したものは477例中8例(1.7%)であり、抗Lea抗体4例、型特異性なし4例であった。またPEG法のみ陽性を示したものは5(1.0%)であり、抗Jka抗体1例、型特異性なし4例であった。そして両者とも陽性は4例(0.8%)であり、抗E抗体2例、型特異性なし2例であった。

2.フィシン法のみで検出された抗Lea抗体は、2−メルカプトエタノール(以下2-ME)処理後の患者血清では陰性となった。また、型特異性のない4例において2-ME処理を実施し得た3例も陰性となった。

 

【考察】

1.フィシン法のみで検出された不規則抗体のほとんどは,2-ME処理後では陰性となったためIgM型の抗体と思われた。

2.抗Jka抗体は、PEG法のみで検出されたことから、検出感度の差異が考えられた。

3.フィシン法のみで検出される不規則抗体は、対応する抗原を選択しないでPEG法で交差試験を行い適合であれば輸血している。今後、二次免疫応答による抗体価の上昇を含め輸血副作用の危険性がないか追跡調査を行い、フィシン法の検査意義についても検討を加えたい。

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