第37回関東甲信地区医学検査学会 2000.10.14-15

血清中(1→3)β-D-グルカン高値例における偽陽性因子の検討

 

○小林加奈  山崎郁子  坂間重宏  宮本豊一  原沢功
(聖マリアンナ医科大学病院臨床検査部)

 

【目的】

 近年、深在性真菌症の補助診断法として血清中(1→3)β-D-グルカン値(以下βD値)の測定が広く実施されている。感度・迅速性に優れている反面、真菌感染症が示唆されない陽性例も報告されている。今回、我々はβD値が高値を示した症例について、真菌感染症との因果関係を検討したので報告する。

 

【方法】

 1997年〜1999年に提出された検体を ファンギテックMK(生化学工業)を用いて測定した。その中でβD値が500pg/ml以上を示した症例を抽出し、診療記録から得た臨床症状、基礎疾患、培養成績、抗真菌剤の投与による臨床症状(炎症反応等)の寛解などを指標として、真菌感染症と因果関係が推定された症例群と推定に至らなかった症例群に分類し、うち偽陽性の可能性が示唆された症例については、各種医療行為(処置、投薬、検査等)に起因する偽陽性因子の検索を行った。

 

【結果】

 βD値が500pg/mlを示した症例は46件で、うち真菌感染症との因果関係が推定された症例群は20件、推定に至らなかった症例群は26件であった。後者のうち、偽陽性の可能性が示唆された症例は12件で、キノコ類由来の免疫強化薬の投与に起因する症例は婦人科で多く、透析行為に起因するものは腎臓内科や担癌患者の末期に多かった。

 

【考察】

 深在性真菌症を併発する症例は、担癌患者や免疫不全患者が多く、投薬や処置によって偽陽性を誘発するリスクが高いことが確認できた。しかし、偽陽性因子が特定出来なかった症例も14件あり、医療行為と採血のタイミング、薬剤の半減期や(1→3)β-D-グルカンの代謝経路などの検討を行うとともに、検査の特性を臨床側へ積極的にアドバイスすることが必要と思われる。

 

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