第37回関東甲信地区医学検査学会 2000.10.14-15

ディスク拡散法による相乗効果判定の検討

 

○吉部貴子、大塚喜人、室谷真紀子、岩井行一
(社会保険中央総合病院 臨床検査部)
濤岡美穂(日本ベクトン・ディッキンソン)

 

【はじめに】

テイコプラニン(TEIC)はMRSAに対し強い抗菌力を有し、β−lactam剤との併用で相乗効果があることは報告されている。一般的に相乗効果判定はcheckerboard法を用いるが、安価で簡便なディスク法によるスクリーニング法を検討した。

 

【材料と方法】

使用菌株は当院で分離されたMRSA109株を用いた。使用薬剤はTEICPAPMCFPMCMZFMOXを用いた。checkerboard法ではFIC0.5を相乗効果ありとした。ディスク法ではセンシ・ディスク(BD)を用い、能書に従いTEIC単剤、併用(β−lactam剤をディスク間隔10oで両側に配置)の測定を行った。判定はTEIC単剤時の阻止円直径とβ−lactam剤併用時の阻止円直径の差を測定した。相乗効果が得られたかの判定基準として単剤時阻止円直径より併用時の方で3o以上拡大した場合に相乗効果があるとして判定を行った。

 

【結果】

checkerboard法で相乗効果が認められた株はPAPM109株中109(100%),CFPM92(84%),CMZ109(100%),FMOX108(99%)であった。ディスク法ではPAPM75株(69.7%,CFPM20(18.4%),CMZ70(64.2%),FMOX69(64.2%)3o以上の差を認めたが、2法は必ずしも一致しなかった。しかしディスク法を基準とした2法の一致率は95%以上であった。

 

【結語】

今回の検討で2法の不一致が起こった理由としてTEICの分子量が大きく、拡散が悪いことで、菌液濃度,接種法,培地の湿潤状態などの影響を受けやすいことが考えられる。今回の検討ではcheckerboard法で相乗効果が認められても必ずしもディスク法で一致するとはいえなかった。しかし、ディスク法で3o以上の拡大が認められた株は、β−lactam剤の併用時MICが≦4μg/ml85%以上)と低値であり臨床的効果を期待できると考えられた。

 

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