第37回関東甲信地区医学検査学会 2000.10.14-15

肝硬変症における肝静脈血流波形と脾循環の関連
(超音波ドプラ法による検討)

 

 ○椿 哲弥(帝京大学溝口病院中央検査部)

 

【目的】

我々は以前より超音波ドプラ法を用いて、肝硬変症における門脈血流動態、および肝静脈血流波形の変化を検討してきた。しかし門脈と肝静脈の関係は明らかにしておらず、またその報告も我々が検索した限りない。今回、門脈系と肝静脈の計測を行い、若干の知見を得たので報告する。

 

【対象と方法】

対象は肝硬変76例とし、門脈系として門脈本幹(MPV)、脾静脈(SV)を測定し、血管断面積(A)と平均流速(MV)の積を血流量とした。MPVのA/MVをうっ血係数(CI)とし、SV血流量/MPV血流量をS/P比とした。肝静脈(HV)は右肝静脈を測定血管とし、血流波形を次の3型に分類し比較した。

1型:肝外へ向かう2峰性の波と下大静脈からの逆流を認める。

2型:2峰性の波を認めるが、逆流は認めない。

3型:2峰性の波、逆流とも認めない。

 

【結果】

(1)MPV血流量とHV:明かな関係は認めなかった。

(2)SV血流量とHV:3型は、1型、2型に比べ明かな血流量の増大を認めた。

(3)CIとHV:2型、3型は1型より明らかに増大していた。

(4):S/P比とHV:3型は1型、2型に比べ明かな増大を認めた。

 

【考察】

今回の検討より、SV血流量の増大とHV血流波形の変化が関係し、3型では明らかにSV血流量が増大していた。また、門脈圧と相関のあるCIは2型、3型で明らかに増大していた。これらのことより肝硬変では門脈圧亢進、SV血流量の増大と、HVの逆流波の消失、2峰性波の消失が関連するものと考えられた。HV、門脈系の変化は肝硬変の進行をある程度反映する結果と考えられた。

 

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