第37回関東甲信地区医学検査学会 2000.10.14-15

マイクロウエーブを用いた脱脂の検討

 

○山口 比呂美   鹿ノ戸 智子    吉臣

           (獨協医科大学越谷病院 病理部)

 

 【目的】

 脂肪を多く含む組織の光顕標本作製において、脱脂には通常2日位を要する。そこでマイクロウエーブ(MW)を脱脂操作に用い処理時間の短縮について検討した。

 

【方法】

 材料は乳房の脂肪組織をホルマリン固定後小片に切り出し、アセトン50mlに組織片1個を入れ、

1)MW脱脂(設定温度50℃、間歇照射)

2)加温脱脂(50℃)

3)室温脱脂を施した。

処理時間は、各々15,30,60分間とした。ただし溶液は15分毎に取り替えた。以上の組織について薄切時の容易さの比較、更にHE標本の評価を行った。また、溶液中に溶出した中性脂肪を測定した。

 

【結果】

 アセトン中の中性脂肪の測定値の差異は、加温脱脂に対してMW脱脂では、平均で約1.5倍多く溶出した。薄切時の切片作製では、MW脱脂で、1530分処理でパラフィン浸透が良好で薄切可能であった。加温・室温脱脂では、60分処理でも浸透不良で薄切困難であった。

 

【考察と結論】

 MW照射処理実験により以下の結論を得た。

1)脱脂にMW照射を行うと、アセトン中に溶出する中性脂肪の量が平均で約1.5倍多くなり、確かにMW照射によって脱脂が促進された。

2)実験の切片作製ではMW脱脂では15分で薄切が可能であったが、加温脱脂では60分でも薄切不可能であった。

3)溶出した中性脂肪の量を比較すると、MW脱脂15分間での溶出量は、加温脱脂60分間の約1/2であった。この事実から脱脂により溶出する中性脂肪の量と薄切の容易さとは平行するものではなかった。

4)MW照射には、脱脂の促進効果以外にパラフィンの浸透を容易にする独自の効果があると考えられた。

 

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