第37回関東甲信地区医学検査学会 2000.10.14-15

Myeloid/NK前駆細胞性急性白血病が疑われた一症例

 

〇竹内   木村 正行  佐々木直志  島倉真美子
 
岩下 淨明  藤川 淳策  熊谷 昌明)
(国立小児病院 研究検査科 同血液科1)

 

  myeloid/NK前駆細胞性急性白血病は、NK前駆細胞由来と考えられている。白血病細胞は、光顕ぺルオキシダーゼ染色陰性で、CDCD56myeloid antigenを示し、高頻度にリンパ節・縦隔病変を主体とする髄外病変を呈する。今回われわれは、初発時にはCD56陰性、再発時にCD56が陽性化したことからmyeloid/NK前駆細胞性急

性白血病と判明した1症例を経験したので報告する。

 

【症例】

10歳男児、199812月、嘔吐、倦怠感を主訴に入院。頚部から腋窩に多数のリンパ節腫脹と肝脾腫、胸部X線にて縦隔腫瘤を認めた。初発時の表面マーカーが、cyCD3CD7、陽性であったことからT-ALLと診断し、ALLの治療を行ったが、無効のためAMLの治療に変更し完全寛解となった。翌年6月、非血縁臍帯血移植を施行したが、その後再発した。この時の表面マーカーは新たにCD8CD33CD56が陽性となりmyeloid/NK前駆細胞性急性白血病と診断された。

 

【入院時検査所見】

末梢血:WBC37.5×103/μl(芽球75) Hb 11.8g/dlPlt 89×103/μl

生化学:LDH 2,278 IU/lUA 12.5mg/dl、他正常

骨髄:NCC 320,000/μl(芽球94)MPO陰性

骨髄細胞表面抗原:CD7,13:陽性

細胞質抗原:cyCD3:陽性

TCR遺伝子の再構成:陰性

 

【細胞所見】

末梢血の異常細胞は、N/C比は大きく、大小不同があり、核に切れ込みを認める。細胞質にアズール顆粒は認められない。特殊染色ではペルオキシダーゼ染色、非特異的エステラーゼ染色、PAS染色共に陰性。

 

【考察】

CD56が陽性になり、NK腫瘍研究会における暫定診断基準によりmyeloid/NK前駆細胞性急性白血病と確定した。また、CD56陰性であっても縦隔腫瘤を有し、cyCD3CD7CD13またはCD33陽性の場合にも、myeloid/NK前駆細胞性急性白血病を考慮する必要がある。