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「舌癌再建患者の味覚検査」

◯秦 暢宏、菅谷晋一、川原由里香、萩田恵子、才藤純一(東京歯科大学千葉病院臨床検査部)、井上孝(東京歯科大学病理学講座・東京歯科大学千葉病院臨床検査部)

【目的】歯科大学を受信する患者の大半は、むし歯および歯周疾患であるため、当検査部では、むし歯予防検査、金属アレルギー検査をルーチンとしてきた。最近では歯科大において治療後や口腔癌の術後に味覚異常を訴える患者も増加してきたため平成11年度より味覚検査の導入を行った。今回我々は東京歯科大学千葉病院口腔外科にて舌癌患者の味覚の変化について検索し若干の知見を得たので報告する。

【方法】平成11年6月から8月の2ヶ月間に東京歯科大学千葉病院で、舌癌により半側切除ないし部分切除を行い再建を受けた11名の患者を対象とした。対照としては、日本大学耳鼻咽喉科・冨田らによる味覚健常者における報告を引用した。

(参考文献:現代臨床機能検査・味覚検査 日本臨床37)

 味覚検査は、マルコ製薬株式会社製の試薬4種(甘味、塩味、酸味、苦味)5濃度を用い、歯科医師指導下のもと濾紙ディスク法を行った。

【結果・考察】今回、舌癌により切除を行った患者の健常側においては、四基本味の閾値に上昇、異味等の味覚の変化が認められた。これは、切除された部位の味細胞を代償する進行性の変化の可能性、放射線や抗癌剤などの影響にる味細胞の退行性の変化、さらに手術における反対側神経群の障害などが考えられる。今後、術前・術後での味覚検査の実施ならびに生化学Dataの検索や、常用薬剤、試用薬剤等の影響の検索、加齢による味覚状況の変化の検索、電気的刺激による電気味覚検査の実施、唾液分泌量の測定、血中亜鉛濃度の測定などの検討を加えることにより、従来、味覚検査は耳鼻科において行われていた本検査を、種々なる口腔疾患が原因となることが多いため、歯科大学の検査室においてルーチン化し臨床にフィードバックしていきたい。