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糞便中のクロストリジウムディフィシルトキシンA検出用キット「イムノカード CDトキシンA」と「ユニクイック」の検討

○宮部安規子、村田正太、石山尚子、渡辺正治、久保勢津子、菅野治重、野村文夫 (千葉大学医学部附属病院)

【はじめに】Clostridium difficile(以下C.difficile)は、偽膜性大腸炎や抗菌剤関連下痢症の原因菌として重要であるが、近年では院内感染の原因菌の一つとして注目されている。さらに発症には本菌の産生する毒素(トキシンA(以下T.A)、トキシンB)が関連していることが知られており、なかでもT.Aが重要な役割を果たしていると考えられている。そこで今回1999年秋に市販されたT.Aを検出する2社のキットについて有用性を検討した。

【材料および方法】<材料>当院細菌検査室において1999年11月から12月までに提出された、院内感染による下痢症患者の糞便72検体を用いた。

<方法>C.difficile トキシンA検出キット「イムノカード CDトキシンA」(以下イムノカード,Meridian Diagnostics, Inc., Cincinnati, OH, USA)および「ユニクイック」(以下ユニクイック,英国オクソイド社製造,関東化学)を用いた。両者ともEIA法の簡易型定性キットである。

【成績】糞便72検体中、7検体が培養法でC.difficileの発育が認められた。培養陽性の7検体のうち、2社のキットでT.A陽性となったのは3検体、陰性は4検体で、どちらも感度42.9%(3/7)、特異度100%(65/65)、一致率94.4%(68/72)となった。なお培養陽性、2社のキット陰性となった4検体のうち、分離されたC.difficileをBHIブロスで48時間培養した菌液を用いてT.Aを測定した結果、3検体が陽性となった。

【考察】今回、72検体でイムノカードとユニクイックを比較すると、両者の結果は全て一致しており、日常検査におけるT.Aの検出に優れていることが示唆された。しかし、腸管内にT.A産生C.difficileが存在していても便中にT.Aが検出されない場合があることから、便から直接T.Aを測定するだけでなく、培養、分離されたC.difficileからも同時に測定する必要があると考えられた。