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乳房温存術断端組織診陽性例における断端細胞像の検討

◯小高 亜紀子、有田 茂実、平田 哲士 (千葉県がんセンター 臨床病理部)

【目的】当院では乳房温存術中の断端検索を擦過細胞診で行っている。術後に放射線療法を施行するが断端に多量の癌細胞が残存する場合は局所再発を回避する目的で追加切除を行う。従って癌細胞量の評価を断端細胞診で定量的に再現よく行う事が必要であり断端組織像に細胞像反映している事が必要となる。今回我々は断端組織陽性例における断端細胞診の癌細胞量と断端組織像とを関連づけて検討した。

【対象】対象は1991年6月から1999年5月までに乳房温存術中断端擦過細胞診を施行した242症例中断端組織陽性であった40症例56断端。

【方法】術中の細胞診標本作成は腫瘍摘出後の患者側乳腺断端(通常は内側・乳頭側・外側の3部位)を擦過し合わせガラス法塗抹で標本を作製しギムザ染色とpap染色を行う。今回の検討はギムザ標本上の癌細胞集団の数、集団の核数および散在性癌細胞、さらに背景(壊死の有無)を計測し断端組織像と比較した。

【結果】断端組織型が乳管内進展を示し癌細胞量が多い場合の細胞像は核異型の強い悪性細胞が15集団以上みられ核数も50核以上と多く散在性細胞も10個以上みられ細胞診でも癌細胞量は多いと判定できた。断端組織型が間質浸潤を示し癌細胞量が多い場合の細胞像は50核以下の中〜小型の癌細胞集団が15集団以上、散在性細胞は10個以上で細胞像からも癌細胞が多いと判定できる。従って細胞診では断端組織型の違いにより出現する細胞形態に違いがみられた。検討した症例の断端細胞像は断端組織像にみる乳管内進展や間質浸潤の数や大きさを再現よく反映する事が示唆された。しかし断端組織陽性でも細胞診陰性の場合、断端組織に癌が露呈していない場合や細胞診で異型乳管上皮細胞を悪性と判定しきれないなどの症例があった。さらに検討を加え報告する。