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市販抗体の唾液吸収抑制試験における反応性について 

○植田早苗 山本浩子 長谷川浩子 富田みね子 伊藤道博(千葉大学医学部附属病院輸血部) 

【目的】抗A、抗B抗体試薬に用いるモノクローナル抗体は、メーカーごとのクローンの違いにより反応性も異なるため、目的に適した試薬の選択と、試薬ごとの適切な条件で行うことが重要である。今回、唾液吸収抑制試験について若干の知見を得たので報告する。

【方法】抗A、抗B抗体試薬は、それぞれ市販モノクローナル抗体6種類とヒト由来抗血清で、被検検体は健常者の唾液(A型11名、B型12名、AB型2名、O型5名、計30名)を用いた。50μlずつ唾液希釈系列を調整し、希釈抗体試薬50μlを加えてよく混和し、室温30分間放置後、各抗体に対応する2%調整赤血球浮遊液50μlを加え、室温10分間放置後、遠心判定を行った。

【結果】@抗A抗体:各モノクローナル抗体試薬とヒト由来抗血清を比較し大きな差異は認められなかった。A抗B抗体:単一クローンのみの抗体試薬ではヒト由来抗血清との差異は認められなかったが、複数のクローンを混合した抗体試薬では部分抑制的な反応が認められた。ヒト由来抗血清では、唾液希釈160倍〜320倍までの2管にだけ弱い凝集がみられたのに対し、複数クローンを混合したモノクローナル抗体試薬では、10倍〜320倍の7管において弱い凝集(×10〜×80までは(+W)、×160〜×320では(1+))がみられたものもあった。

【考察】抗A抗体試薬に関しては、ヒト由来抗血清との差異はないと思われた。一方、部分抑制のような反応を示した抗B抗体試薬に関しては、唾液中の血液型物質と反応しにくいクローンが含まれている為、その抗体による凝集が残るのではないかと考えた。更に検討を加えることで、本試験に使用できるモノクローナル抗体の選択が可能になるものと考える。

(Tel:043-226-2479)