第22回千葉県臨床衛生検査学会抄録(平成13年2月11日開催)



リコンビナント抗原を用いた梅毒TP抗体測定試薬の評価

○久保田 清美、児玉 登美子、上野 芳人、
 三橋 裕行、桑田 昇治、木野内 喬
  (帝京大学市原病院 中央検査部)

【目的】われわれは、日常検査で梅毒TP抗体定性検査を行なっているが、 cut off index 付近での偽陽性検体が多く認められ、その対策として、他の検査法との併用を行い確認している。今回、リコンビナント抗原を用いた改良試薬の基礎的検討および、従来試薬との比較検討を行ったので報告する。
【対象と方法】対象:当検査室に梅毒TP抗体検査の依頼のあった患者血清を用いた。
方法:試薬は、従来法『ルミパルスI TP』、本法『ルミパルス・ TP-N』(富士レビオ社)を用い、全自動測定装置『ルミパルスf』にて測定した。また、確認法としてTPHA法、エスプラインTPを行った。
【結果】1)再現性:2濃度の試料による同時再現性はCV 3.49〜3.68%、日差再現性は1.97〜4.35 %であった。2)検出感度:TP陽性血清を段階希釈し検出感度を比較したところ、本法は従来法よりも高感度であった。3)共存物質の影響:ビリルビンF 16.5mg/dl、ビリルビンC 16.4mg/dl、溶血ヘモグロビン480mg/dl、乳び2120ホルマジン濁度まで影響は認められなかった。また、妊婦検体、RF高値検体、自己抗体および高γグロブリン血症患者の血清試料でも測定値に影響は認められなかった。4)相関:267例のうち、従来法(+)で本法(−)が25例、従来法(−)で本法(+)が4例認められ、両者の一致率は89.1%であった。
 不一致検体29例をTPHA法およびエスプラインTPで確認したところ、本法の成績と一致していた。【まとめ】本法の再現性は良好であり、共存物質の影響も認められなかった。また従来法と比較して感度、特異性ともに改善が認められ、偽陰性や偽陽性検体の件数も減少した。よって、本法は日常検査において有用な測定法であると考えられる。
          電話0436-62-1211(1216)
簡易キットによるPSA測定の検討

○安里勝男 下条小百合 下川絹次郎

(株式会社サンリツ)

【目的】PSA検出用簡易キットであるPSAカードの基礎的検討を行ったので報告する。
【使用試薬・方法】今回、検討をした簡易キットは西独のDiagnostica社で開発されたスマイテストPSAカード((株)ゲノムサイエンス)である。本キットは免疫イムノクロマトグラフィーを利用した方法で、カードの滴下部に血清を200μl滴下し、20分後にテストライン上にでた赤紫色の強弱で判定する。ちなみにテストラインは3本ありライン1は陽性線、ライン2は内部標準線、ライン3はコントロール線に区分される。判定方法としてライン1とライン2が同等の場合を擬陽性(±)、ライン2よりライン1が明らかに濃いときを陽性(+)とした。簡易キットを検討するにあたり対照として、PSA精密測定「イムライズ―HPSA(CLEIA法)」と「TandmR(RIA法)」を用いて行った。
【成績】再現性:2濃度を使用して再現性を確認しところ問題はなかった。一致率:全体の一致率は73.5%、PSA値カットオフ=4.0ng/mlにおいて4.0ng/ml以上の一致率は100%と良好、反対に4.0ng/ml以下における一致率は43.5%と低くなり、簡易キットの方が正誤差を生じた。反応が進んでいると仮定し、判定時間の追加検討を実施した。既知5濃度を用いて検討し、判定時間は10分とした。この条件での判定一致率は83%、4.0ng/ml以上の一致率は100%、4.0ng/ml以下での一致率は77.3%と良好な結果となった。陰性での不一致率の大部分が2.0―4.0ng/mlを占めた。2.0ng/mlではほぼ確実に陰性であった。
【考察】本キットは高感度である。この為判定については時間に注意する必要があるが、本キットでの判定は迅速にスクリーニング検査ができ、有用性が高いと思われる。
    連絡先047−487−2631(代)

制作・著作:社団法人千葉県臨床衛生検査技師会