第22回千葉県臨床衛生検査学会抄録(平成13年2月11日開催)



自己血球溶血液を用いた妨害物質試験の検討
 
○ 折井美和 小野香織 清宮正徳 真々田賢司
伊藤順子 澤部祐司 大澤進 朝長毅 野村文夫
(千葉大学医学部附属病院検査部)  

【目的】現在、血清中定量成分に及ぼす溶血の影響は、一般に干渉チェック(国際試薬)等の干渉試験専用試薬が用いられている。しかし生体成分は個人によりその存在形態が異なり、差異を生ずる可能性がある。そこで今回我々は、自己血球溶血液を作成して自己血清に添加し、妨害率を比較したので報告する。
【方法】当院患者検体46例について、EDTA-2K加血液を生理食塩水で3回洗浄を行い、洗浄血球を-20℃で凍結融解した後、精製水でヘモグロビン濃度を5g/dlに調製し、これを試験用溶血ヘモグロビン液とした。各患者血清9容に対し、自己溶血ヘモグロビン液1容を加え溶血試料を作成し、同様に精製水1容を加えた試料を対照として、血清中定量成分48項目について妨害率を比較した。
※妨害率=(溶血試料の測定値-対照の測定値)/対照の測定値×100(%)
【結果】溶血ヘモグロビンの影響は、今回検討を行ったほとんどの項目で個人差が認められた。各項目の妨害率の平均値は-103〜381%、変動係数は31〜4599%であった。特に、血清中に比較して血球中に多く存在するとされているLDの妨害率は145〜916%、ASTは48〜608%、CKは15〜860%と大きな個人差が認められた。また、同時に行った干渉チェックとの比較でも個人差が認められ、特にIgA,IgMに関して、干渉チェックでは妨害率5%以下であるのに対し、自己血球を添加したものではIgA 3〜14%、IgM 25〜75%と大きく解離していた。
【まとめ】血球に含まれる物質には個人差があり、溶血の影響を干渉チェック等キット化されたものだけで判断すると、実際の患者試料では誤った結果を報告してしまう可能性があるので、注意する必要がある。      連絡先:043-226-2328
フィブリン除去に用いる竹串が血清中成分に与える影響

〇高橋章予 藤原恵子 中川京子 齋藤啓子
吉田俊彦 伊藤順子 澤部祐司 大澤進 野村文夫(千葉大学医学部附属病院 検査部)

【目的】当検査室では竹串を用いてフィブリン塊を除去していた。しかし、竹串で除去を繰り返して検査を行った結果、Kが上昇するという経験を得た。そこで、竹串が生化学・免疫検査に与える影響と、その回避方法について検討を行った。
【方法】血清1mlに竹串を1本浸し、以下の検討を行った。@影響の有無の検討:患者プール血清4種に1時間浸漬させた試料を当検査室で定量的数値の出る79検査項目について測定した。A浸漬時間による影響:@で測定値に影響の認められた項目について、10秒〜60分の経時的変動を調べた。B洗浄による影響回避の検討:洗浄水(水道水、脱イオン水)400mlに対して30本の竹串全体を一晩浸し、乾燥させた。洗浄水の交換の有無による効果と、洗浄前後の血清に与える影響を調べた。
【結果】@定量的数値の出る検査項目を測定した結果、影響を認めた項目は抱合型ビリルビン(C-BIL)、GLU、Kであった。各項目の最大上昇幅は、C-BIL 0.23→0.46mg/dl、GLU140→146mg/dl、K3.9→4.6mEq/lであった。A浸漬透時間の影響は、C-BILが1分で0.05→0.13mg/ml、Kは2分で4.0→4.4mEq/lと短時間での上昇が確認された。B洗浄による影響回避の検討では、洗浄済みの竹串は、上記の項目に影響を与えず、今回行った方法別による差は認められなかった。
【考察】市販の竹串を未処理のままフィブリン塊除去に用いると、生化学データに影響を与えることが確認された。本来データに影響を与える竹串は使用すべきではないが、使いやすさ、経済性に優れている竹串を使用するには、竹串を一晩水に浸け、可溶成分を溶出させれば、影響を回避できることが確認された。
           連絡先 043-226-2328
 

制作・著作:社団法人千葉県臨床衛生検査技師会