第22回千葉県臨床衛生検査学会抄録(平成13年2月11日開催)



グリコアルブミンの基礎検討

○下元有久 堀田富康 下条小百合 下川絹次郎
  (株式会社サンリツ)

【目的】グリコアルブミン(GA)は過去約2週間の平均血糖値を反映するといわれているが、血糖管理指標としてはHbA1cが多く測定されている状況である。今回、カラムスィッチング方式を用いたHPLC法にて、GA測定の基礎的検討を実施した。
【方法】機器:「Hi-AUTO GAA-2000」アークレイ
(HbA1c:「Hi-AUTO A1c-8131」アークレイ・「デタミナーHbA1c」協和メデックス FRA:「リキテックフルクトサミン」ロッシュダイアグノスティク)
【結果】1・管理試料の作成:GAは採取した血清中でも糖化が進むといわれている為、経時変化を確認したところ、温度以外にグルコース濃度の影響を受けた。また市販の管理血清は不安定であるため、適切な管理血清を作成し、再現性の確認および精度管理に使用した。
2・再現性:同時再現性はCV0.26〜1.11%、日差
再現性はCV0.89%であった。
3・共存物質および抗凝固剤の影響は特に認められず、アルブミン濃度については、1.1〜5.5g/dlまで影響は認められなかった。
4・HbA1cとの相関は、r=0.896 y=2.77X+1.90であった。しかし、腎疾患、透析検体では相関係数は下がり、その場合はHbA1c値についてもHPLC法とラテックス法とでは乖離が多く認められた。FRAとの相関はr=0.889であった。
【まとめ】管理血清で適切にカラムの状態を管理し、それに応じてキャリブレーションを行うことで精度が維持でき、迅速に安定した結果を得ることができた。GAは保険診療では、HbA1c、FRAなど糖化蛋白を同時測定した場合、主たるもののみ算定される。よって各疾患に応じこれらを的確に用いる事が重要になると思われる。
連絡先:048-487-2631(代)
LDH活性阻害を呈したLDH結合性免疫グロブリン血症の一症例について

 ○高階成実 津村真由美 上野芳人 三橋裕行 
  桑田昇治 木野内 喬 
 (帝京大学医学部付属市原病院中央検査部)

【目的】
 LDH (EC 1.1.1.27) に、免疫グロブリンが結合した症例は今までに数多く報告されている。今回われわれは、LDHに2つの免疫グロブリン(IgGおよびIgA型)が結合し、血清中LDH活性が低値を示した一症例を経験したので報告する。 
【症例】
 69才男性、1990年に検診にて便潜血陽性と貧血を指摘され、精査のため当院受診、進行性大腸癌 (type2) と診断され、左半結腸切除術を施行された。退院後、経過観察のため定期的に通院している。1990年の当院初診時のLDH活性は332U/L(W-L 法)であったが、1992年には116U/Lと低下し、1993年には22U/L、それ以降は5〜43U/Lの範囲の低活性値を示した。
【方法および結果】
 アイソザイム分析はアガロ−ス電気泳動法(ヘレナ研究所)により、タイタンジェルS-LD試薬(乳酸基質)を用い発色させ、デンシトメ−タ−にて測定した。患者血清の泳動像は、塗布点付近の位置にbroadな低活性のバンドが検出された。また、患者赤血球の泳動像は、正常パタ−ンであり、遺伝的なLDH欠損症は否定された。免疫電気向流法は各種抗体で反応させ、その結果、IgGとIgA(κ型)であった。
【考察】
 LDHに、免疫グロブリンが結合し、LDH活性阻害を呈した症例には、肝疾患や悪性腫瘍などで報告されており、免疫グロブリンがLDH失活因子として、その生化学的性状についても研究がなされている。
本症例は、大腸癌の切除術後に、血清中LDH活性が、徐々に低値を示した1例である。患者赤血球のLDH泳動像は正常であるが、血清中の免疫グロブリンがLDHと結合し、酵素活性を阻害していると思われる。大腸癌の存在が機序としては考えられるが、原因は不明である。

連絡先 0436-62-1211 内線1216

制作・著作:社団法人千葉県臨床衛生検査技師会