第22回千葉県臨床衛生検査学会抄録(平成13年2月11日開催)



マスター運動負荷における運動強度の個人差について

○ 生田佳子 山本修一 片山明子 松戸景子
 真々田賢司 荒井満恵 大澤 進 朝長 毅
 野村文夫 (千葉大学医学部附属病院 検査部)

【目的】運動負荷心電図は、心疾患の診断過程において重要な役割を果たしている。
運動負荷試験の方法は、多くの方法があるが、外来におけるスクリーニング検査法として、臨床ではマスター運動負荷を利用することが多い。しかし、マスター運動負荷試験の負荷量は、年齢・体重と性別でのみ負荷量が決定されるため、患者による負荷量が一定ではないとされている。そこで今回我々は、マスター運動負荷前後の心拍数より運動強度を求め負荷量の比較を行ったので報告する。
【方法】健常者17名(男性12名、女性5名、年齢22〜40歳)について、日本光電社製ECG-8270を使用しマスターダブル負荷試験を行った。安静時、及び負荷開始後2分から負荷終了後5分までの心電図を記録し、安静時心拍数、負荷中最大心拍数から@心拍数の上昇率、A負荷中最大心拍数/予測最大心拍数[220−年齢]、B運動強度[(負荷中最大心拍数−安静時心拍数)/(予想最大心拍数−安静時心拍数)]×100を求め比較を行った。
【結果】心拍数の上昇率の平均値±SDは、194.5±20.2%であった。そして運動強度の平均値±SDは、51.28±9.79であった。
【考察および結語】運動強度の平均値は、51.28と負荷強度は中等度であった。そして、SDは9.79と大きく、運動強度の個人差がみとめられた。同様に、心拍数の上昇率も、その差に開きがみとめられた。
以上より、マスター運動負荷試験の運動強度は中等度であり、スクリーニング法として有用であると思われる。しかし、運動強度には個人差が大きく、心拍数の上昇率は、運動習慣や生活習慣の違いが左右すると考えられる。(本発表に際しご指導頂いた、当院第三内科大沼徳吉先生に深謝致します。)
(連絡先:043-226-2330)
感染後脳炎によるopsoclonus-poly-myoclonus症候群(OPS)の一例

〇高橋照子 宮鍋寛 橘高拡悦 大沢真知子
白熊昭司 染谷貴美枝(松戸市立病院)

【目的】我々は1999年11月に比較的まれな異常
眼球運動の1つとして知られているオプソクローヌス(OC)を呈するOPSの一例を経験し若干
の知見を得たので報告する。
【症例】患者は、1999年10月25日頃全身倦怠感
嘔吐の出現により近医を受診するも改善せず、11月1日、複視、ふらつきも出現し4日、紹介先の脳外科に脳梗塞の疑いで緊急入院となった。この時MRI、脳血管造影が施行されたが異常は認められず16日、精査加療の為当院転院となる。
【入院時所見・検査所見】脳神経系所見として、
両眼共同性に主に水平方向、時に上下斜めにも向く無秩序で迅速な異常眼球運動であるOCを認め片眼、閉眼で軽減した。また姿勢変換時に体幹および上肢に軽いクローヌスを、線上歩行・つぎ足歩行で著名にふらつきを認めた。
血液生化学検査所見は正常。髄液細胞数33/mm3
蛋白59mg/dlと軽度上昇を認めた。血中ウイルス
抗体価の有意な上昇は認めなかった。
ENG所見では、注視眼振検査にOCが高頻度に
混入し注視方向変換時の増加が確認出来た。ETT、OKP、カロリックテストは、正常であった。重心動揺検査では、閉眼時に前後への揺れを持つ
求心型を示し、外周面積は、8.31cm2と基準範囲を越え、ロンベルグ率も4.6とやや高値を示した。また、開眼パワースペクトルにおける0.2Hz前後の山、閉眼Y軸3Hz近くのわずかな山、閉眼時の動揺パターンより小脳前葉の機能障害を示唆するデータと推定された。
【結語】OPSは、良性脳炎に伴って見られる事が多く本例でも発症より約1ヶ月で改善し退院となった。今回特にENGや重心動揺検査が早期診断や病変部位推定の一助となった。047-363-2171

制作・著作:社団法人千葉県臨床衛生検査技師会