第22回千葉県臨床衛生検査学会抄録(平成13年2月11日開催)



コントロール尿を用いた尿沈渣の精度管理

〇行木大、伊瀬恵子、加藤真裕美、工藤彰人、大澤進、野村文夫(千葉大学医学部附属病院検査部)

【目的】当院では市販のコントロール尿(以下C-1)を用いて、尿定性の精度管理を行っている。C-1には固定赤血球と白血球疑似物質が添加されており、これを用いた尿沈渣の精度管理の有用性について検討した。あわせて自家製コントロール尿(以下C-2)についても変動を求めたので報告する。
【方法】1.試料C-1:Liquichek Level2(バイオラット社)  C-2:自家製コントロール尿−固定赤血球・白血球添加0.1%アジ化ナトリウム・
1%ホルマリン加定性陰性尿
2.測定方法 1)機器法:6800形日立尿自動分析装置(以下H6800:日立メディコ)  2)鏡検法:日常検査法で標本を作成し、算定場所は指定5ヶ所とし各視野(以下HPF)実測平均値を求めた。
【結果】1.C-1の日差再現性はH6800で54日行いRBCがMEAN:138.8個/HPF、CV:7.0%、WBCがMEAN:30.2個/HPF、CV:13.6%であった。同様に、鏡検法では25日行いRBC-MEAN:144.6個/HPF、CV:5.0%、WBC-MEAN:27.1個/HPF、CV:11.1%であった。2.C-2は鏡検法のみ行った。1)日差は20日行いRBC-MEAN:20.5個/HPF、CV:9.6、WBC-MEAN:11.2個/HPF、CV:11.3%であった。2)施設内変動は技師4人で5日間行いRBC-MEAN:21.1個/HPF、CV:18.2%、WBC-MEAN:11.4個/HPF、CV:18.1%であった。3)施設間変動は当院を含む県内6施設で2日間の平均値より求め、RBCはMEAN:29.9個/HPF、CV:51.7%、WBCはMEAN:18.3個/HPF、CV:53.6%であった。
【考察及び結語】C-1は測定結果よりH6800精度管理用試料として有用性があることを確認した。しかし、赤血球数が多いことや白血球が疑似物質であることなどから鏡検法への応用は難しいと思われた。今日、日臨技において尿沈渣標準法が制定され、日臨技法に準拠して検査が行われている。しかし、今回の検討からも尿沈渣の施設間変動が非常に大きいことがわかった。今後施設間差是正のため、測定条件の統一とコントロールサーベイの必要性を認めた。    連絡先 043-222-7171
乳癌の脳転移により癌性髄膜炎を起こした一症例

〇鈴木真澄 江原由希 樽井直美 渡辺一博
染谷貴美枝(国保松戸市立病院 臨床検査科)

<はじめに>
髄液は、機械的衝撃から中枢神経系を保護するためにあり、本来なら水様透明で細胞種類も大部分は単核球細胞である。今回我々は、乳癌を原発巣として脳転移となり、その後髄液中に異型細胞が出現し癌性髄膜炎と診断された症例を経験したので報告する。
<症例>
55歳 女性 1997年12月乳癌により右乳房切断術施行。1999年7月CT検査で腫瘍が確認され左側頭開頭腫瘍摘出術を施行し、病理組織学的検査にて転移性脳腫瘍と診断。同年10月MRI検査で小脳・延髄への転移が認められた。2000年6月幻覚症状が出現し髄液検査が提出され髄液中に異型細胞が確認された。
<検査所見並びに経過>
異型細胞出現時の血液・生化学検査は特記すべき異常所見は認められなかった。髄液検査では、蛋白316mg/dl・糖15mg/dlと異常値を示した。総細胞数は1520/3mm3と増加し、その中で大小不同、N/C比大のクロマチン豊富な異型細胞が40/3mm3認められた。パパニコロウ染色では、偏在核に核小体が目立ちクロマチンの増加が見られた。ギムザ染色では、異型細胞の細胞質が塩基性に強く染色されていた。化学療法はチオテパ・シタラビン・プレドニゾロンが使用されて、総細胞数の減少と共に異型細胞の減少も見られた。その後9月には異型細胞は確認されなくなった。
<まとめ>
細胞数算定では、通常単核球と分葉核球に分類するが、異型細胞の出現もあるので病理部門と情報交換をし、正確な報告を臨床側にする事が望まれる。 連絡先047-363-2171 内(3019)

制作・著作:社団法人千葉県臨床衛生検査技師会