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脾臓低形成に伴う劇症型肺炎球菌敗血症の一例

○ 鈴木幸子  佐藤正一  鈴木義正 (千葉県救急医療センター)

【はじめに】 脾摘後には莢膜保有菌により、敗血症や髄膜炎などの重篤な細菌感染症に罹患しやすい。我々は、脾臓の低形成状態であったため劇症化したと考えられる肺炎球菌敗血症の一例を経験したので報告する。

【症  例】 69歳 男性 2002.02.21朝方から突然に腰背部痛が出現し、症状増悪、顔色不良となり翌日未明、当センター来院となる。

【来院時所見】 体温38.0℃、血圧90mmHg、顔面、腹部、四肢末端にチアノーゼと紫斑を認め、ショック状態であった。血液検査では、血小板減少を認めCPK,UN,Cre,UA,AST,ALT,LDH,CRPの上昇と低血糖を認めた。血液ガス分析では代謝性アシドーシスであり、DIC徴候であった。胸部および腹部X線、腹部血管造影では、とくに異常所見はなかった。

【臨床経過】 入院後、抗ショック療法、強心薬投与、人工呼吸管理、抗生剤投与を行う。血液像検査では、好中球の空砲を認め、球菌が貪食されていた。また、Howell-Jolly小体を認めた。ショック状態蔓延、増悪して高K、低Ca血症、乳酸性アシドーシス強く、心肺停止に至った。一旦蘇生に成功するがその後も状態が悪化し持続血液濾過(CHOF)を行うが、死亡した。血液培養から肺炎球菌が検出され、いずれの抗菌剤に対しても良好な薬剤感受性を示した。病理解剖にて脾臓が50gと体格に比べ低形成であった。

【考  察】 本症例では、1)病理解剖における脾臓の低形成の所見。2)末梢血塗抹標本においてHowell-Jolly小体を認めた。3)血液培養から肺炎球菌の検出。これらから脾臓の低形成状態が誘因となり肺炎球菌感染が急速に重篤化し死亡したものと推測された。

連絡043-279-2211