設問8

52才、 女性。左下肢脱力で整形外科を受診、入院時の脳脊髄液である。矢印で示す細胞を 判定してください。
血算:WBC (4300/μl) RBC ( 245×104/μl) Hb (8.1g/dl) Ht( 22.9%)
生化学: TP (11.4g/dl) ALB (2.3g/dl) IgG (7670mg/dl) IgA ( <23mg/dl)IgM (<18mg/dl)
リコール: 細胞数( 522/3 μl ほとんど単核球) 蛋白(285 mg/dl) 糖( 30mg/dl)

計算盤200倍

400倍
メイギムザ染色400倍

骨髄液形質細胞 ギムザ染色400倍

正解:骨髄腫細胞 (病名:多発性骨髄腫)

解説:細胞算定用計算版(サムソン液):顕微鏡倍率 200倍
中央に正常リンパ球があり、その周りに正常リンパ球の3倍〜4倍の単核の細胞を認める。
サムソン液:顕微鏡倍率400倍
肥大した核小体を持つ単核および2核の異型細胞を2個認める。
メイギムザ染色:顕微鏡倍率400倍
好塩基性の(灰青色)細胞質でピンク色の核周明庭を持ち、核は単核〜2核の細胞を多数認める。核小体は肥大し、核は大小不同を呈し核網は粗大結節状である。
正常の典型的形質細胞は、濃青色の細胞質で比較的小さな核は偏在し、核周明庭があり核クロマチン構造は濃縮して大集塊を呈し核小体は見られない。
この症例の細胞は、正常の形質細胞に比し細胞が大型でN/C比も大きいこと、2核の細胞が目立つこと、細胞質が灰青色で核小体は肥大していることなどから骨髄腫細胞
を診断できる。しかしながら症例によっては、反応性の形質細胞と鑑別困難なものも
あり、臨床所見やレントゲン検査(骨の打ち抜き像)、単一クローン性グロブリンの増加があるか、連銭形成が見られるかなどの検査も参考にすることが重要である。
追加解説:形質細胞 という回答が多数ありましたが、正常の髄液中の細胞は小リンパがほとんどである。髄膜炎や脳炎などの感染症やくも膜下出血、多発性硬化症などの中枢神経系の疾患でリンパ球のほか、単球あるいは赤血球を貧食した組織球、分葉核球、形質細胞などが見られることがある。また、髄液採取の際には末梢血や骨髄血細胞なども剥離混入する事も細胞を見る際に考えなければいけない。
本症例の細胞は通常骨髄血に見られる形質細胞と比較すると大きさや特徴が前述したように通常では見られない細胞であり、単一にこのような細胞が多く見られた場合は臨床所見と合わせて考えれば、腫瘍性のものを考えなければいけない。

成田赤十字病院 田中雅美

回答集計 参加施設数 74
骨髄腫細胞(異型細胞) 23(31.1%)
形質細胞 31(41.9%)
リンパ球(異型リンパ球 ) 12(16.2%)
その他 8(10.8%)
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