髄液検査の新たな展開 - 髄液検査2002を中心に -
医療法人雪ノ聖母会 聖マリア病院 臨床検査部  大田喜孝 

髄液は中枢神経系の病態に直接アプローチできる数少ない検査材料であり、とくに髄液一般検査は早急な治療を必要とする髄膜炎・脳炎の診断や治療経過の観察のために欠くことのできない検査法である。だが、日常検査の中での髄液は検査件数や症例数が血液や尿とは比較にならないほど少ないという宿命的なハンディを持つことから、そのガイドラインの作成にはかなりの困難が予想されてきた。しかし、今後わが国でさらに加速されて行くであろうネットワーク医療や、根拠に基づいた医療(evidenced based medicine:EBM)の展開を考えれば、当然、検査データの精度管理や施設間差是正が必須となってくる。髄液検査とて同様であり、これまでのように各医療施設の検査室がそれぞれの方法で、独自のデータを作成することには大きな問題がある。たとえば、髄液採取後1時間以上放置して検査を開始している施設。未だにメランジュールを使用している施設。細胞分類において核の形状だけで多核と単核に分類している施設。細胞数の表現単位が施設によって /3mm3であったり /μlであったりと統一されていない事実。クロール,トリプトファン,ノンネアペルト反応などの検査がいまだに実施されている施設などである。
 2001年11月に日本臨床衛生検査技師会において髄液検査法編集ワーキンググループが結成された。グループは髄液検査に精通した5名のスタッフで構成され、氏らの豊富な経験とともに蓄積されたデータと、現在までに一般に認められた数多くの文献的事項の蒐集をもとに2002年8月、「髄液検査法2002」が上梓された。本稿では髄液検査法2002をもとに、標準化に主眼をおいた髄液一般検査法について解説する。
髄液の取り扱い上の注意点
 髄液一般検査の精度を維持するためには、髄液検査を行う前に入手すべきいくつかの情報や、守らなければならない事項がある。
 1.採取法で異なる検査値
 髄液採取法は一般的な腰椎穿刺法と、脳室穿刺(脳室ドレナージ)や後頭下穿刺(大槽穿刺)など頭部を直接穿刺する方法とに分けられる。後者は前者に比較し、蛋白含有量が1/2〜1/3程度にとどまり、これは髄液の循環速度(髄液の入れ替わり速度)が異なるためと考えられる。また、脳室穿刺では髄液中に大脳組織小片や脳室周縁細胞の混入を認めることがあり注意を要することなどから、検査を開始する前に髄液採取法を明確にしておく必要がある。
 2.髄液の採取容器と必要量
 採取容器はプラスチック(ポリプロピレン)製の滅菌スピッツを用いる。ガラス製に比較し荷電陽イオンが生じにくく、管壁に細胞が付着しにくい(細胞表面は陰イオンに荷電)。2〜3本のスピッツに分けて採取し、最初の1本目を一般検査に用いる。髄液は成人で1分間に約1mlの速度で更新されており、そのため腰椎穿刺では最初に流出する髄液により多くの細胞を含む傾向がある。採取した順番をにスピッツに記入しておくとよい。
 腰椎穿刺による髄液採取は容易に繰り返して行なうことはできないので、無駄のない確実な検査を行なうためには、あらかじめ各検査に必要な最低量を把握しておく必要がある(表1)。なお、微生物学的検査を施行する場合は雑菌の混入を避けるため、他の検査との共有を避ける。
3.ヘパリン添加による弊害
 髄液には原則として抗凝固剤を使用しない。髄液採取時に血液が混入した場合など、凝固を恐れてヘパリンが添加されることがある。ヘパリンは細胞数算定時に使用するサムソン液と反応し、微細な粒子が多量に発生し、細胞検査の大きな弊害となるので注意を要する。これはヘパリンの成分のアミノ酸(セリン,グリシン)がサムソン液中の酢酸に反応し、凝集,結晶化するためと考えられ、添加したヘパリン量が多いほど結晶粒子量も多くなる。
 4.髄液の保存
 一度採取された髄液中の細胞変性は非常に早く、冷蔵保存しても防ぎきれない。これは髄液の蛋白量が少ないことと、髄液本来の浸透圧の低さに起因している。室温保存では2時間後に約30%の細胞が変性,融解し、とくに好中球の変性速度はリンパ球に比較して早い(図1)。少なくとも採取後1時間以内に検査を開始する必要があり、そのために髄液を採取した時間を明らかにしておく必要がある。
 5.肉眼的観察
 正常の髄液は無色透明であり、混濁や着色は病的変化の可能性がある。検査を開始する前に肉眼観察を加えることで、出血の有無や細胞の増多の程度を推定でき(表2)、後の微生物学的検査などの必要性を予測することができる。
 細胞の微細粒子(日光微塵)の観察は髄液の入ったスピッツを光にかざしながら軽く振って行う。血性髄液の場合は化学的検査における遠心分離の際に、上清のキサントクロミーの有無を確認する。

化学的検査法
 現在、髄液検査で実施されている化学検査には一般的な蛋白,糖の測定をはじめ、各種の酵素や、いくつかの古典的な化学検査などがあるが、項目選択に際し重視すべきは、それらが臨床的意義を有し、緊急検査の現場で迅速かつ簡単に、正確性をもって測定できる項目であるかどうかという点である。
 1.蛋白
 通常、血清蛋白の0.2〜0.6%が髄液に移行する。したがって腰椎穿刺髄液の蛋白量は健常成人で15〜45mg/dlで、A/G比も1.5〜2.3と血清値とほぼ同じである。髄液蛋白はあらゆる中枢神経疾患で上昇し、一般的に50mg/dl 以上であれば病的増加と考えられる。とくに細菌性髄膜炎,結核性髄膜炎,真菌性髄膜炎の憎悪期,ギラン・バレー(Guillain-Barre )症候群などで高値を示す。これは血液脳関門が破壊され、多くの蛋白が血中より髄液に移行するためである。髄液蛋白の検出法としてはピロガロールレッド法,スルホサリチル酸法などがあり、分光高度計や自動分析装置を用いて測定する。
 一方、多発性硬化症や脳炎では中枢神経系で産生された免疫グロブリンにより髄液蛋白が増加するため、髄液蛋白の測定よりもむしろA/G比やIgGの検索が重要となる。とくに多発性硬化症ではオリゴクローナルバンド(oligoclonal band)やミエリン塩基性蛋白(myelin basic protein)の証明が診断に有効とされている。
 2.糖
 髄液糖は血糖値の60〜80%に維持されており、血糖値が正常であれば髄液糖は50〜80mg/dlを示すが、その値はあくまでも血糖値に左右される。髄液糖の評価に際しては常に血糖値を参考にし対比する必要がある。髄液糖が低下を示す代表的な疾患として細菌性髄膜炎,結核性髄膜炎,真菌性髄膜炎,悪性腫瘍の髄膜浸潤などがあげられ、これは髄液腔で増加した病原微生物や好中球による嫌気性解糖作用、あるいは血液脳関門の破壊による糖移送能障害が原因とされている。測定には電極法(グルコース専用分析装置)や酵素法(汎用生化学自動分析装置)を用いる。
 3.LD
 髄液中のLD(lactate dehydrogenase)は細菌性髄膜炎で優位に上昇し、さらに予後推定や治療効果の判定に役立つことから、臨床的に意義のある髄液マーカーとされている。正常髄液やウイルス性髄膜炎のLDアイソザイムではLD4, LD5はほとんど認められず、LD1, LD2, LD3>LD4, LD5のパターンを示す。一方、細菌性髄膜炎では著しく増加した好中球由来のLD4, LD5が上昇し、LD1, LD2, LD3<LD4, LD5となり、そのためLD値が高くなる。しかし、ウイルス性髄膜炎であっても髄液中にリンパ球が著明増加した例ではリンパ球由来のLD2, LD3が上昇し、髄液LDが上昇を示すことがあるので注意する。また中枢神経組織の破壊が生じた場合は組織由来のLD1,LD2が上昇する。髄液LDの基準値はJSCC法で25U/l以下であり、測定は血清LDと同様に汎用生化学自動分析装置で行う。
 4.CK
 髄液中のCK(creatine kinase)は血中のそれとは独立して変動し、髄液蛋白量の影響もほとんど受けない。CKには骨格筋由来のCK-MM,心筋由来のCK-MB,脳由来のCK-BBがあるが、髄液中で検出されるのはほとんどがCK-BBである。髄液中のCK基準値は6U/l以下で、髄液中のCKが上昇する疾患には脳挫傷,髄膜脳炎,脳腫瘍,脳血管障害,多発性硬化症などがあげられ、その上昇は脳組織の荒廃に由来すると考えられる。また髄膜炎症例において、重症例では細菌性,ウイルス性を問わず髄液CKの上昇を示すのに対し、軽症例では上昇せず予後推定に有用であるとの報告も認める。髄液CKの測定は髄液LDと同様で汎用生化学自動分析装置を用いる。

 5.測定意義に乏しい化学的検査
 1)Cl(クロール)
 髄液中のClは血中Clに由来し、血中より15〜20mEq/l 高値を示す。この差はDonnan(の膜)平衡ならびに髄液と血液間に存在する電位差により生じるとされ、髄液Cl値は血中Cl値の変動に従い増減する。髄液中の蛋白が上昇するとのDonnan平衡に抵抗が加わり、そのぶん髄液Clは低下する。たとえば細菌性髄膜炎など髄液蛋白が著明に増加する例ではおのずと髄液Clは減少する。かつて結核性髄膜炎で髄液Clが特異的に低下するとの報告がなされたことがあるが、のちにこれは結核性髄膜炎に生じる低クロール血症が原因であることが明らかにされた。したがって、血中Cl値の把握と正確な髄液蛋白の測定がなされていれば、あえて髄液Clを測定する必要はないということになる。
 2)ノンネ・アぺルト(Nonne-Apelt)反応,パンディー(Pandy)反応
 ノンネ・アぺルト反応は1908年に、パンディー反応は1910年に報告された。本反応は髄液のグロブリン検出試験として理解されている向きにあるが、いずれも真のグロブリン反応ではなく、古典的な髄液蛋白の半定量法として認識すべきである。正確な蛋白定量が可能となり、さらには免疫グロブリンなどの詳細な検索が日常となった現在、これらの検査法を実施する臨床的意義はほとんどない。
 3)トリプトファン(tryptophan)反応
 本反応は結核性髄膜炎の髄液中にトリプトファンが存在することが報告されて以来(Aiello, 1927)、結核性髄膜炎の補助的診断法として応用されてきた。わが国ではホルムアルデヒドを用いボアズネー(Voisenet)反応を基本にした里見変法が知られているが、本法の反応機序はいまだ明らかではなく、結核性以外の各種髄膜炎やキサントクロミー髄液でも陽性を示すことがあり、ときに臨床の誤解を招く危険がある。さらに貴重な髄液材料を一度に1mlも使用することにも問題がある。結核菌検出のための迅速培養法やPCR(polymelase chain reaction)法,MTD(micobacterium tuberculosis direct test)法など高精度検査法が確立されつつある現在、過去の慣習のみで根拠に乏しい検査を持続することには大きな問題がある。


 髄液細胞の観察
 1.細胞数の算定と分類
 髄液細胞の検索は髄膜炎,脳炎をはじめとする各種中枢神経系感染症の診断ならびに治療効果を推定するうえで最も重要とされる。それだけに高い精度が要求され、使用する器具,手技には細心の注意が必要となる。
 1 )希釈方法
 @希釈はプラスチック(ポリプロピレン)製の試験管で行う。
 髄液採取の項でも述べたが、プラスチック試験管はガラス製に比較し管壁への細胞付着が少ない。
 A希釈液にはサムソン(Samson)液を用いる。
 サムソン液はもっとも一般的な希釈染色液であり、他の希釈液(Pappenheim液など)に比較し、短時間で安定した染色結果を得ることができ、高濃度の酢酸を含むため、髄液に混在した赤血球の融解能力も高い。サムソン液は密栓のできる容器で保存し、染色性が劣化する前に定期的(1?1.5年ごと)に更新する。
 B希釈にはマイクロピペットを使用し、髄液:サムソン液=180:20μlあるいは200:20μlとする。
 かつてのメランジュール法は、実際量以上の髄液が必要で、サムソン液の逆流による失敗の可能性や吸い口を介して起こる感染の危険性などの問題から使用すべきではない。マイクロピペット容量はメランジュール法をそのまま置き換えれば、髄液:サムソン液=180:20であるが、それが200:20であっても臨床的に問題となるような誤差は生じない。
 C細胞数が著しく増加した髄液では、あらかじめ髄液を生理食塩水で適度に希釈する。
 細胞数が5桁になるような例(細菌性髄膜炎)では計算盤上に好中球どうしが重なり合ったり、集塊を形成したりして算定困難となる。この場合、肉眼的に髄液の白濁が薄らぐまで生理食塩水で希釈する。×10,×20,×40の倍々希釈法が簡便である。
 D髄液に多数の赤血球が含まれると白血球の核の染色性が低下し、細胞算定の障害となる。この場合、髄液とサムソン液を混合後、試験管のまましばらく放置することで赤血球の融解が促進されるとともに、核の染まりがよくなる。
 2)細胞数算定法
 @フックス・ローゼンタール計算盤を推奨する。これは現在わが国の検査室で髄液細胞算定に使用されている計算盤の多くはフックス・ローゼンタールであり、計算盤はかなり高価なこともあって、今の使い慣れたもので十分との見解によるものであるが、今後、計算盤を更新をする機会があれば、算定した細胞数がそのまま/μl値となる「細胞算定用計算盤」も一考の価値がある。
 A計算室の両側にニュートンリングがみられるようにカバーガラスをかけ、サムソン液で希釈した髄液を注入後、細胞が計算室の底に沈降するまで3〜5分間放置する。
 B作業効率を良くするために鏡検倍率は200倍(対物レンズ20倍×接眼レンズ10倍)を使用するのがよい。200倍では1視野にフックス・ローゼンタール計算盤の最小区画が4区画入り、効率良く細胞算定と分類を同時に行うことができる(図2)。
 C白血球のみを算定の対象とする。
 髄液細胞検査の第一の目的は髄膜炎,脳炎の推定(とくに細菌性か否か)であり、これらの指標となるのは白血球の数と種類である。白血球以外に臨床的意義のある細胞を認めた場合は別途報告する。
 D結果値は整数とし、単位は細胞数表示の国際標準単位である /μlを用いる。/3mm3はあくまでもフックス・ローゼンタール計算盤もつ特性に合せた単位にすぎない。
 E最小値は1とし、算定した数値が1に満たない場合は1/μl以下と表現する。
 F髄液細胞数の参考基準値は 5 /μl以下とする。しかし、乳児では基準値の上限が20 /μl,新生児では25 /μlと通常に比較して高いので注意する。 


 3)細胞分類法
 @単核球と多核球の2種類に分類する。
 A結果値は細胞数が多い場合は各々の%,少ないときは実数で示す.
  ・多い場合の例  細胞数 385/μl, 単核球:多核球=83:17(%)
  ・少ない場合の例 細胞数 12/μl, 単核球:多核球=11: 1(個)
 ※計算盤上に100個以上の細胞を認める場合に%表示し、100に満たない場合は実数表示するのが一般的である。
 Bリンパ球,単球,組織球を単核球としてまとめ、好中球,好酸球,好塩基球を多核球としてまとめる。各細胞の計算盤上の細胞形態については次に示すとおりである。
 4)計算盤上の各白血球形態
 @単核球
 a.リンパ球
 白血球の中で最も小型で、核はほぼ円形、細胞質は狭く核周囲にリング状にみられる。リンパ球の増加は一般にウイルス感染症ならびに慢性炎症を示す。
 b.単球
 大きさはリンパ球の1.5〜2倍で、サムソン液によく染まる細胞質を有する。偏在する核は類円形で切れ込みをもつものが多い。単球は髄膜の炎症や頭蓋内出血など、髄膜へのある種の刺激に対し反応性に出現する。
 c.組織球
 組織球は髄液に出現する白血球の中で最も大型だが、核は一般に小さくN/C比は低い。単球と同一起源の細胞であり、その出現機序や細胞形態も単球に似る。細胞質は泡沫状で淡い桃色を呈し、変性空胞を認めることもある。小型核は偏在し、ときに多核のものも認める。くも膜下出血や脳室内出血などでは組織球の細胞質内に赤血球片やヘモジデリン顆粒の貪食を認めることも多く、これは髄液腔内出血を反映する有用な所見である。
 A多核球
 a.好中球
 好中球の細胞質はサムソン液に染まらず、偽足をもったような不整形を示すものが多い。分葉した核が重なり合い、ボ?ル状にみえ、核の形状のみでは単核球と区別できない場合が少なくない。しかし、細胞質の形状と染色性に留意すればリンパ球や単球との鑑別は容易に行なえる。好中球の増加は細菌感染症ならびに急性炎症を示す。
 b.好酸球
 好酸球は寄生虫性髄膜炎やアレルギー反応で著明に増加することがあり、この場合とくに好酸球性髄膜炎とも呼ばれる。好酸球は好中球に比較してより円形のものが多く、注意深く観察すると細胞質内が輝くような淡いオレンジ色を呈し、典型的なものはメガネ状2核を示す。しかし計算盤状では積極的な分類は避け、ギムザ系染色を施し確認する。
 c.好塩基球
 好塩基球は好酸球とともに少数出現したり、髄膜炎回復期に数%の割合で認めることがあるが、サムソン染色の認識はできない。計算盤上では好中球,好酸球とともに多核球として分類する。
5)その他の細胞
 白血球以外の細胞で、髄液中にもっとも出現しやすいものとして赤血球があげられる。クモ膜下出血や脳室内出血などの病的原因によるものと、髄液採取時に血管を破傷したために生じる医原的出血によるものとがあるが、双方の赤血球形態に本質的な違いは認めない。軽度の出血では赤血球はサムソン液の酢酸効果で時間の経過とともに融解,消失するが、出血の程度が強いほど計算盤上に多くの赤血球が残存しやすくなる。また、新生児症例などで末梢血中に赤芽球を認める例では病的,医原的出血にかかわらず、髄液中に赤血球に混じて赤芽球が出現することがあり、リンパ球などの単核細胞と誤認しないよう注意が必要である。赤芽球の場合、リンパ球に比較しN/C比が小さく、赤血球と同じ色の細胞質(淡い橙色)を有することが鑑別点となる。
 他に髄液に出現する可能性のある病的な細胞としては、各種病原微生物,脳ヘルニアにみられる脳神経細胞,原発性腫瘍細胞,転移性腫瘍細胞などがあげられる。一方、臨床的意義に乏しいものとしては髄液採取時に医原的に混入する様々の細胞があり、腰椎穿刺髄液では皮膚扁平上皮細胞,椎体軟骨細胞,骨髄細胞。脳室ドレナージ髄液では大脳組織細胞,脳室脈絡叢細胞などがあげられる。
 なお、計算盤上に白血球以外の細胞を認めた場合、それが病的意義を有するものであれば診断や治療を行う上で重要な指針となることが多い。したがって、細胞数の算定,分類とは別に付加価値としての積極的な臨床側への情報提供が望まれるが、計算盤のみによる詳細な判断は避け、病的異型細胞に関しては「異型細胞疑い」としてのみ報告し、後にギムザ系染色による細胞塗抹標本で確認する必要がある。

 このテキストの文章は(社)日本臨床衛生検査技師会髄液検査法編集ワーキンググループ著,「検査と技術」技術講座,髄液一般検査の新たな展開,vol.31,No.9,医歯薬出版社より抜粋した。


文 献

1)(社)日本臨床衛生検査技師会髄液検査法編集ワーキンググループ:「髄液検査法2002」,(社)日本臨床衛生検査技師会,pp15-55,2002

2)佐藤能啓,大田喜孝:髄液細胞アトラス,朝倉書店,pp23-54,1992

3)稲垣清剛,稲垣勇夫:穿刺液細胞アトラス.医歯薬出版,pp6-20,1994

4)大田喜孝:一般検査における髄液細胞の見かた.検査と技術,Vol.28, No.4:349-357,2000

5)石山雅大:髄液の採取と検査の進め方.Medical Technology,Vol31, No.5:472-475,2003

6)奈良 豊:髄液の生化学検査.Medical Technology,Vol31, No.5:476-483,2003



顕微鏡実習の様子
色々な症例の標本を鏡検することができました



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