体腔液 解答解説

解答:悪性中皮腫

解説
(現病歴臨床所見)
平成7年他院にて胸膜中皮腫(原発右側胸膜)と診断され、平成8年右肋骨、横隔膜を含む右肺全切除術が施行された。平成9年8月呼吸困難、腹水貯留を主訴に当院を受診し悪性中皮腫の再発と診断され、化学療法を行ったが完治せず外来にて対症療法のみ行っていた。平成10年4月全身状態が悪化し再度入院となり、X線像で左肺の透過性の低下、胸膜の肥厚、胸水の貯留が認められた。また腹水は淡黄色粘稠性でヒアルロン酸は154万ng/mlと高値を示し、腹水細胞診で悪性中皮腫と診断され、同年5月死亡、剖検となった。病理診断は右胸膜中皮腫術後再発と多臓器転移および浸潤が主病変だった。
(組織所見)
腹部腫瘤
立方形ないし円柱状の細胞がわずかの血管結合織を伴い乳頭状に増殖している。腫瘍細胞のN/C比は高く、核は類円形ときに不整で大型のものも認められる。核小体は明瞭、クロマチンは粗大顆粒状、核縁の肥厚が見られる。遊離した腫瘍細胞は単核〜多核、細胞質は好酸性で広く、アルシアン青染色陽性の空胞を持ち、印環細胞様のものも見られた。また、腫瘍細胞はケラチン、ビメンチン陽性、CEA陰性、ヒアルロニダーゼ消化後のアルシアン青染色は陰性化した。以上より悪性中皮腫とした。
(細胞所見)
在性~不規則乳頭状配列を呈する異型細胞が見られる。細胞質は厚く均一で、細胞辺縁は明瞭、核は円~類円形で、腫大する核小体は1~2個程度認める。クロマチンは粗顆粒状で増量しており不均一な分布をしている。PAS染色では細胞辺縁に陽性顆粒を認める。以上より悪性中皮腫を考える所見である。

(症例提示 : 成田赤十字病院  岡田 裕子)

PAS反応
アルシアンブルー染色

opyright:(C) 2001 Chiba Association of Medical Technologists. All rights reserved.
ホームページで公開している文章や画像などの著作権は社団法人千葉県臨床衛生検査技師会に帰属します。
これらの文章や画像を社団法人千葉県臨床衛生検査技師会の承諾なしに複製、他の電子メディアや印刷物などに再利用することはできません