設問 8

社団法人千葉県臨床衛生検査技師会 一般検査研究班

51歳、女性。 突発性の激しい頭痛にて救急外来受診、CTにてクモ膜下出血、脳血管撮影にて脳動脈瘤の診断で緊急手術。術後、水頭症をきたし、脳室ドレナージ施行した。この矢印の細胞を判定してください。

家族歴:実兄が2年前、動静脈奇形によるクモ膜下出血にて当院にて手術。

検体:手術後の髄液(ドレナージ)
性状:血性、キサントクロミー(+)、細胞数 41/μl、糖45mg/dl、蛋白110mg/dl 、

設問8-1サムソン染色400倍

設問8-2ギムザ染色400倍

正解 組織球(赤血球・ヘモジデリンを貪食した大食細胞)
 
解説 8-1はサムソン液中の酢酸により背景に赤血球は崩壊して見えない、組織球の細胞質は泡沫状または空砲状で赤血球を貪食したような形跡が見られる。
8-2は2個の組織球が見られる。細胞質は泡沫状または空砲状で一部に壊れかかった赤血球を貪食している。
くも膜下出血とは、一般に脳を取り囲む髄液の中に出血したものであり、その原因の約80%は脳動脈瘤破裂による。この患者は、くも膜下出血を起こしその結果髄液の循環障害である水頭症を来たした。水頭症は頭蓋内圧を亢進させ、また脳実質内に髄液が浸透し、神経細胞にダメージを及ぼすので髄液の排出が必要である。
くも膜下出血の急性期の水頭症は、通常脳室ドレナージ(脳室内の髄液を一時的に体外に排出させるシステム)で対処するが、この時一般に髄液も採取することが多い。このドレナージはいずれV−P(脳室−腹腔)シャントに移行する。そのために髄液の評価が必要となる。髄液中の細胞数や蛋白量が多いとドレナージシステムに比べてシャントシステムは管の内腔が細く閉塞しやすいためである。写真の組織球は反応性に出現したもので、赤血球の貪食が見られる。この組織球の出現日数は当然その出血量等によって異なるが次第に数が減少し消えていく。

組織球とは   クリックしてください
田中 雅美(成田赤十字病院)

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