HOME へ戻る

症例1 婦人科解答

解答 粘液性腺癌



HE染色
対物 4倍


HE染色
対物 20倍

解説

 子宮体癌の約80%は類内膜腺癌であり1),類内膜腺癌の一部に粘液性腺癌を伴うことはめずらしくなく,組織標本の10%以上を占めるときは混合癌に分類される.しかし,子宮体部原発の粘液性腺癌はまれであり体癌取扱い規約1)では,ほとんどの癌細胞が細胞質内に粘液を多量に持つ腺癌をいうと定義され,類内膜癌の一型として分類されている.

 組織学的には,多量の胞体内粘液を有する高円柱状細胞が乳頭状に増殖し粘液分泌能が旺盛で,腫瘍細胞は分泌された粘液内に浮遊するように存在していた.核異型や重層化は乏しかった.筋層浸潤は2分の1以下,両側卵巣,骨盤内リンパ節転移はみられなかった.子宮頸部との移行像はみられなかった.以上より,子宮体部原発の粘液性腺癌と診断された.

 術前の内膜擦過細胞診では,標本背景は壊死と少量の粘液成分を伴っていた.腫瘍細胞は卵円形,印鑑型,杯細胞型で高円柱状を示し,乳頭状や一部孤立性に出現していた.乳頭状辺縁では柵状配列を呈していた.核は小型で軽度の大小不同を示し,核クロマチンは細顆粒状に増量,核小体は小型,細胞質内には好酸性の粘液を多量に含んでいた.

 子宮体部原発の粘液性腺癌は頸部原発腺癌と類似の形態を呈し,その細胞形態から内膜細胞診による粘液性腺癌の推定は可能であり,子宮体部に原発することを認識することが重要である.

 

1) 脇昭介,杉森甫.取扱い規約に沿った腫瘍鑑別診断アトラス.東京;文光堂:1993.

2) 日本産婦人科学会,日本病理学会,日本医学放射線学会編.子宮体癌取扱い規約(改訂第2版).東京;金原出版:1997.

Copyright:(C) 2002 Chiba Association of Medical Technologists. All rights reserved.
ホームページで公開している文章や画像などの著作権は社団法人千葉県臨床衛生検査技師会に帰属します。
これらの文章や画像を社団法人千葉県臨床衛生検査技師会の承諾なしに複製、他の電子メ
ディアや印刷物などに再利用することはできません。