設問 4

社団法人千葉県臨床衛生検査技師会 一般検査研究班

30歳、男性 人間ドック受診時の尿沈渣です。 矢印で示した成分を判定して下さい。
尿定性検査:pH6.0 蛋白(1+) 糖(1+) 潜血(1+)
加温で不溶、酢酸・水酸化カリウムで不溶、塩酸で可溶

設問 4-1 無染色400倍

正解:蓚酸カルシウム結晶

解説: 蓚酸カルシウム結晶は、酸性尿で認められることが多いがアルカリ性尿でも認められ、顕微鏡下では無色で屈折性を呈し光って見える。この症例に見られるようなビスケット状や球状・亜鈴状・楕円状を呈する結晶は1水塩が多く、正八面体を呈する結晶は2水塩が多い。1水塩の場合には特に赤血球と紛らわしいことがあるので注意を払う必要がある。蓚酸カルシウム結晶は、塩酸で徐々に溶解するが酸・アルカリには不溶であり、赤血球は酢酸の添加により壊れるので鑑別が可能である。
 健常人では、過飽和溶解状態のまま結晶核の生成を見ることなく排泄されるか、もしくは小さな結晶で止まって排泄されることが多い。結石患者では準安定過飽和溶解の上限が低く大きく成長した結晶をしばしば認めることがある。
 1水塩は結晶構造が密なため破砕されにくく、2水塩は破砕されやすい傾向にある。
全尿路結石の約8割がカルシウム結石(蓚酸カルシウム・燐酸カルシウム)で占められており、そのうち食事性高蓚酸尿症の頻度が最も高く尿中蓚酸の8割強が肝臓で生成される内因性蓚酸(約4割はアスコルビン酸から生成)であり、残りが外因性で蓚酸含有量の多い食品(ほうれん草・チョコレート・ココア・ピーナッツなど)を多量に摂取することにより増加する。また、クエン酸はカルシウムとキレート作用があり尿中カルシウム結晶形成を抑制するが、再発性尿路結石患者の30〜50%は低クエン酸尿症である。

解説 4-1から 解説 4-5 に蓚酸カルシウム結晶の各種形態を示す。

解説 4-1 正八面体型 400倍 解説 4-2 立方体型 400倍
解説 4-3 大楕円型 400倍 解説 4-4 楕円型 400倍
解説 4-5 亜鈴型 400倍

解説:水野 由喜子(東京歯科大学市川総合病院MBCラボ)

 
回答集計 (参加98施設) 施設数
シュウ酸Ca結晶 98 100


次の設問へ   トップにもどる


Copyright:(C) 2003 Chiba Association of Medical Technologists. All rights reserved.