設問 7
社団法人千葉県臨床検査技師会 一般検査研究班

54歳、男性。「朝起きて咳込んだ時に口から虫の様な物が出てきた。」と写真に示す物を
持参してきました。写真に示す成分を判定してください。




正解:回虫(成虫雄)  Ascaris lumbricoides

解説:成虫の体長は雌が30cm、雄が20cmに達し、体幅はそれぞれ5mmおよび4mmである。lumbricoidesというのはミミズのようなという意味である。拡大すると頭端(A)は3個の口唇がある。また雌雄は肉眼で鑑別することが出来る。すなわち雄の方は体が短く、やや細く、そして尾端が腹側に弧状に曲がり、その先端(B)には針状の交接刺がある。
肉眼で雌雄を鑑別する際、成虫が途中で途切れてしまった時は、尾側が無いと困難になる。この場合、便虫卵の有無で雌雄を推測する事になる。
回虫の虫卵は直径50μm程度で受精卵と不受精卵があり形態が異なる。受精卵は楕円形で最外層には金平糖様の蛋白膜はある。不受精卵は不定形で受精卵に比べ、卵殻、蛋白膜ともに発育が悪く薄く、内部には大小の顆粒が存在する。
虫卵はヒトが嚥下後、小腸で孵化し260μmの幼虫となり小腸→門脈→肝臓→(血流)→肺→気管支→小腸と体内移行し1.7mm程度まで成長する。その後腸管内で成虫となる。
本症例は吐出まで症状が無かった事より、主に小腸に寄生する成虫が、十二指腸、胃を逆流して気管に達したと考えた。

受精卵        不受精卵

解答集計

(参加91施設)

施設数

回虫(人回虫も含む)

86

94.5

アニサキス

4

4.4

アメリカ鉤虫

1

1.1


解説:森 修治(JFE健康保険組合川鉄千葉病院)

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