検査技師の採血業務について
-採血業務導入の効果と問題点-

千葉大学医学部附属病院 検査部 高橋妙子

T.中央採血室導入の経緯
 当院は平成9年度および10年度の2年間で検体搬送自動化システムの導入に伴い、検体の認識方法としてバーコードを採用した。外来では検査のオーダリングシステムと中央採血化に伴いバーコード付き採血管を供給するシステム(BC-ROBO-550:テクノメディカ社)を導入した。このシステム稼働にあたり検査部運営会議で各科運営委員と協議し、中央採血室の設置と運営方法を決定した。

U.中央採血室の運営方法
1.運営形態:検査部、看護部、診療科の3部門で運営する
2.業務内容:外来中央採血(消耗品管理、採血準備および採血業務等含)と病棟用採血管供給(予約時間:AM 8:30- PM 4:00)の2つの業務。
3.採血時間:AM 8:30~PM4:00
4.採血者:診療科(医師)3名、看護部(看護婦)
3名、検査部(臨床検査技師)2名。
5.採血対象:小児科、小児外科、精神神経科、人工腎臓部を除く全科の受診患者で下記の用途に用いる血液検体としては以下の8項目がある。
 @検査部で行う院内検査
 A外注検査(契約している3業者)
 B放射線部で行うRIインビトロ検査
 C薬剤部で行う血中薬物濃度検査
 D輸血部用検査
 E採血依頼のあった研究用採血
 Fブドウ糖負荷試験(75gOGTTのみ)
 G安静時採血のレニン活性
6.採血状況:平成10年7月21日より 実施し、現状としては一番忙しい月曜日で450-550人。少ない火、金曜日で250-350人。1患者当たり平均4-5本採血。ピーク時間帯は10時30分より13時30分頃である。
7.技師の役割:主たる業務として
1)消耗品管理と採血準備
2)各診療科医師の採血当番業務の確認と連絡
3)採血量が足りるかどうかの判断
4)採血管準備システムBC-ROBOの維持管理
5)病棟採血用採血管の準備業務
8.採血業務の問題点
1)止血が不十分なために起きる出血斑のクレーム。
2)各科採血として取り決めた4科の患者さんが、他の科を受診すると中央採血室に来ること。
3)採血し難い患者さんや、とても気むずかしい患者さんが中央採血室に来てトラブルの元になる。
4)昼休みの採血スタッフが手薄になる時間帯は、疲れや忙しさから採血ミスのトラブルが増える。

V.中央採血化による効果
 従来の各科採血の待ち時間が大幅に短縮し、患者サービスが向上した。バーコード方式により、検体採取に伴う検査過誤が無くなった。また、検体分注要員が不要となり省力化と新規項目の導入が図られた。検査の迅速化が図られ、診療前検査が可能となった。外来・病棟での採血管準備の繁雑な仕事が解消された。

W.まとめ
 10歳以下の子供が耳鼻科や眼科に受診したときなど、各科採血と決めた4科の患者さんが他科を受診したときの対処方法。また、出血斑のクレームにはどの部門が対応するのか等、今後議論する必要がある。一年間運用し、見えてきた諸問題を診療科や看護部と話し合い、トラブルシューティングに関する内容をマニュアル化する必要がある。中央採血室の技師への効果としては、採血に携わったことで今まで採血された血液を物のように扱っていたのが、その背景に人としての痛みや病気の苦しみがあることを理解できるようになること。私達自身の内面も変化し、至急を取り扱う対応法一つとっても、変わって来るように思う。また、採血直後の検体を正しく処理する事で、正確なデータを迅速に臨床に返すことが出来るようになったと考えられる。