中央採血室における患者トラブル

順天堂大学浦安病院 検査科
後藤 秀之  川畑 貞美

平成10年千葉県臨床衛生検査学会において,中央採血室の患者トラブルをまとめその傾向を報告した.その後トラブルの集計を継続し,前回の集計と比較を行った.また,トラブルの代表的な例を具体的に報告する.
病院概要,中央採血室(以下,中採)の構成,業務内容などの変更はない.
【対象と方法】
平成8年1月〜平成9年10月,および平成10年1月〜平成11年4月に中採で採血,出血時間を実施した患者99,999名,75,921名について,業務日誌に記載されたトラブルをまとめ,内容から次のように分類した.
     A:各外来の患者への説明不足,患者の理解不足や誤解
     B:事務的ミス              C:採血部位の腫れ・血液の漏れ・痛みなど
     D:採血中・後の気分不良    E:採血の中止          F:その他
【結果】
調査期間中遭遇したトラブルを分類に従って一覧表とした.H8〜9年の発生数は67件(0.067%),H10〜11年は61件(0.080%)であった.
  
内容 A B C D E F
H8-9     16 23 9 9 2 8 67件
(%)     23.9 34.3 13.4 13.4 3.0 11.9
H10-11    3 23 10 15 2 8 61件
(%)     4.9 37.7 16.4 24.6 3.3 13.1


H10-11のB事務的ミスのうちもっとも多かったのは医事課用伝票,診察券の入れ間違いなどで23件中13件(56.5%)であった.次に4ケースを表した.

〔ケース1〕出血時間測定中に血液で上着を汚してしまい,その対応が悪いと患者が激怒した.技師長・主任が別室で患者の話を聞き,患者の言い分を十分に理解し,一方患者は激怒したことを担当者に詫びた.
〔ケース2〕前週に同一の検査をしているはずという患者からの申し出があった.外来に問い合わせ前週に依頼されていない検査のみ採血した.問い合わせによる外来・中採双方の業務停滞を引き起こし,患者待ち時間の延長になった.
〔ケース3〕電話連絡がなく緊急採血が通常の順番通りになり,結果返却の遅れに繋がった.
〔ケース4〕新任医師が依頼伝票に無関係な時間を記入したため,食後の時間指定採血と勘違いし,患者を待たせてしまった.採血を待つ患者からのクレームで判明した.

【考察】
前回同様,事務的ミスによるトラブルが最も多く発生していた.その内訳は医事課用伝票,診察券の入れ間違いなどの単純な間違いが13件,56.5%を占めていた.1年4ヶ月で13件の発生頻度は客観的に高いのか低いのか判断がつかない.しかし,オーダリングなどの根本的改革をすることによりある程度は解消できると考えられる.患者の微妙な立場を表しているのが〔ケース1〕であった.上着を血液で汚したことが引き金になって,患者にとっては著しく気分を害することになったと考えられる.この場合,別室で患者に気の済むまで話をしてもらい,事無きを得ることができた.〔ケース2〕は患者の医療に対する意識の高さを表しており,情報公開が進む現在このような例は増加すると考えられる.〔ケース3〕連絡を忘れたために発生した.職員のミスであり予防できるものであった.〔ケース4〕新任医師の場合のトラブルは説明することで解決する.医師によって記入する時間の意味が異なっていたことも判明し,統一してもらうよう依頼して解決した.                    連絡先 047-353-3111(3301)