第37回関東甲信地区医学検査学会 2000.10.14-15

粗大な中毒性顆粒をもつ好中球が出現した一症例

 

○徳竹孝好,石坂あづさ,馬場ひさみ,成田厚子,青木和雄
(長野赤十字病院中央検査部)

 

【はじめに】

好中球の中毒性顆粒は,重症感染症や悪性腫瘍,糖尿病性昏睡などの炎症性疾患に出現するとされているが,近年は好中球減少時のG-CSF 投与により誘発されることも知られている。今回われわれは,好塩基球との鑑別を要した粗大な中毒性顆粒をもつ好中球が出現した症例を経験したので報告する。

 

【症例】

77歳,女性。

 

【既往症と現病歴】

平成72月,長野赤十字上山田病院にて右の乳癌のOPを施行。平成10年リンパ節転移が認められ4月と10月に化学療法を施行。その後左縦隔リンパ節に転移巣が残存し,同部に対する外照射目的にて9月5日長野赤十字病院放射線科に紹介となった。99日の骨シンチでは坐骨,腸骨,肋骨など多数の集積像が得られ,多発性の骨転移が疑われた。9月14日の血液検査にて,血小板が1.6 /μlと著明に減少し,さらに皮下出血も認められたため緊急入院となった。その後凝固系検査の異常も認められ,DICが診断され血小板輸血10単位を6日間行うが,症状の改善はみられず,多臓器不全により101日死亡した。

 

【末梢血液像】

918日の白血球数が4800/μlで,このうち成熟好中球(StabSeg )は3216/μlであった。成熟好中球のうち,形態学的に正常の好中球は77%で,粗大な中毒性顆粒をもつ好中球は23%であった。 後者の細胞は出現頻度がやや低く,さらに粗大な顆粒を示したことから,好塩基球との鑑別を要した。トルイジンブルー染色を行い,異染性を示す細胞をカウントしたが1%未満であり,MG標本上の好塩基球様の細胞は粗大な中毒性顆粒をもつ好中球であることが判明した。

 

【まとめ】

低頻度に出現する粗大な中毒性顆粒は,好塩基球との鑑別に注意が必要と考えられる。  

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