第37回関東甲信地区医学検査学会 2000.10.14-15

新生児メレナの診断にHPLC法によるHbF測定が有用であった一症例

 

○白石淑子 傳田こずえ 馬場ひさみ 徳竹孝好

(長野赤十字病院 中央検査部)

 

【はじめに】

新生児出血性疾患(新生児メレナ)の診断では、吐血物が消化管出血に由来するか、母体血の嚥下に原因するかの鑑別が必要となる。両者の鑑別には,新生児血液中に多く存在するヘモグロビンF(HbF)のアルカリ抵抗性を利用したApt試験が用いられる。今回、新生児吐血物の分析に、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)法が有用であった一症例を経験したので報告する。

 

【方法】

@Apt試験:吐血物と新生児血液および母親血液に1%NaOHを添加した。

AHPLC法:新生児吐血物を3000rpm5分遠心し、上清の粘液様成分を取り除いた。沈殿した血球成分を生理食塩水で2〜3回洗い、血球成分のみを採集し、溶血洗浄液(東ソー)で溶血処理を行った。HLC-723GHbV A1c2.2(東ソー)にて、処理をした吐血物と新生児血液および母親血液のHb分画それぞれを測定した。それぞれのHbF含有率とクロマトグラムについて比較した。

 

【結果】

@Apt試験では、母親血液は緑色に変色したが、吐血物と新生児血液はアルカリ抵抗性を示し変色しなかった。

AHPLC法では、吐血物と新生児血液はHbF優位の新生児パターンを示し、HbF含有率(76.5%、76.0%)と波形パターンともに一致し、成人パターンを示す母親血液とは明らかに相違した。

 

【考察】

以上から、吐血物中の血液成分は新生児の血液であると同定され、吐血物は新生児消化管からの出血に由来する可能性が高いと推測された。HPLC法はHbF含有率やクロマトグラムの比較により明瞭な形で鑑別ができ、有用である。

 

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