第37回関東甲信地区医学検査学会 2000.10.14-15

血液塗抹標本を用いた免疫細胞化学染色による免疫グロブリン検出の試み

 

○山本雅彦、松林恵子、永野浩、高田浩子      
武藤由香子、麻生裕康(千葉県がんセンター)

 

【はじめに】

Bリンパ球系悪性腫瘍性疾患の診断には細胞表面あるいは細胞質内免疫グロブリンの検出が重要である。従来からFITC標識抗体を用いた蛍光抗体法が利用されているが、標本の保存や形態観察に難点がある。また、FCM法では目的の細胞数が少ない場合には解析不能となる。一方、モノクローナル抗体を用いた免疫細胞化学染色では細胞数に影響を受けず、標本の保存も可能である。しかし、通常の標本作成法では血清中に存在する免疫グロブリン(Ig)が染色され判定が困難となる。今回、我々は標本作成の前処理としての細胞洗浄法について検討し、若干の知見を得たので報告する。

 

【対象及び方法】

多発性骨髄腫、悪性リンパ腫(BML)症例のEDTA-3K加末梢血および骨髄血を用いた。細胞の洗浄はpH7.41/15M PBS4%ヒトアルブミン(Alb)を用いて検討した。一次抗体はN社、D社及びZ社の抗ヒトIgG,A,M,D,κ,λマウスモノクローナル抗体を用い、SABAP法によって染色し比較した。細胞洗浄は0.2 mlの検体に5mlPBS又はAlbを混和し、2000rpm5分遠心し、上清を置換して行った。

 

【結果及び考察】

洗浄回数は骨髄腫患者検体で検討したが、3回の洗浄で上清中のIg定量値が検出限界以下となったことから、少なくとも3回の洗浄が必要と思われた。また、PBSのみでの洗浄では細胞変性が強く観察に耐えなかったが、3回目の洗浄をAlbで行うことにより、形態の保持とともに安定した染色像が得られた。また、一部の検体のκ、λの染色で一次抗体のクローンの違いによって全く異なる結果を得たが、抗原側あるいは一次抗体の認識部位についての検討が必要と思われた。

 

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