第37回関東甲信地区医学検査学会 2000.10.14-15

重症熱帯熱マラリアの1症例

 

○白鳥祐子 池田広美 奥原篤 駒木吉伸  
染谷貴美枝(松戸市立病院 臨床検査科)

 

【はじめに】

 マラリアは、日本において毎年100人前後の患者発生が確認されている。今回、発症より7日を経た極めて重篤な熱帯熱マラリアの症例を経験したので報告する。

 

【症例】

患者は35歳、女性。1999年12月26日から1月5日までケニア、タンザニア、インドを旅行し帰国。2000年1月13日より胃痛、頭痛、1月17日より高熱が出現し18日に近医受診。その後も通院を続けるが改善せず、意識障害を伴い1月23日入院。著明な血小板減少、急速に進行する貧血(Hb11g/dl→6g/dl)、黄疸 、腎不全にて血液疾患(TTP)等を疑われ、1月24日当院紹介入院。

 

【入院時現症】

 意識障害(+)、BP 116/56mmHg、HR 121/min、全身黄染(+)、脾腫(+)

 

【入院時検査所見】

 WBC142×102/μl RBC164×104/μl Hb4.9g/dl PLT2.6×104/μl PT17.4秒(46.0%) APTT53.4秒 FDP66.1μg/ml T-Bil6.38mg/dl D-Bil2.59mg/dl AST131IU/1 ALT115IU/1 LDH2352IU/1 BUN115.6mg/dl CRP29.8mg/dl  末梢血液像では輪状体、分裂体、骨髄像では輪状体、分裂体、生殖母体が認められ、重症熱帯熱マラリアと診断。末梢血液像での赤血球感染率は29.9%だった。

 

【経過】

マラリアと診断後、直ちにキニーネとアーテスネートによる治療を開始。3病日目、マラリア原虫は殆ど消失。意識障害や溶血性貧血は3日以内に、DIC、肝機能、腎機能障害は8日前後に改善した。

 

【まとめ】

熱帯熱マラリアは、急速に悪化する疾患であり迅速な診断が要求される。本症例は、熱帯熱マラリアの中でも末期の重症マラリアであった。

 

TEL:047-363-2171(3012)