第37回関東甲信地区医学検査学会 2000.10.14-15

IgD M蛋白を認めた濾胞性リンパ腫

 

〇立石寿美子 深海律子 増田瑞枝(済生会船橋済生病院)

 

【はじめに】

濾胞性リンパ腫(follicular lymphoma)は、濾胞様の腫瘍細胞増殖を示す B-cell type の悪性リンパ腫で,分化段階において免疫グロブリン再構成に異常が起こり、しばしば免疫グロブリンの分泌異常が認められる。我々は IgD-λ型 M蛋白および尿中 λ型 Bence-Jones蛋白を認めた濾胞性リンパ腫を経験したので報告する。

 

【症例】

60歳男性。1997年より高血圧症にて他院通院中。2000年1月頃より背部痛あり。腎機能障害と貧血を認め、転移性骨腫瘍の疑いにて当院紹介入院。頸部及び鼠径部リンパ節を複数触知した。 【入院時検査所見】WBC 11,100 /ml(異常リンパ球 48%)、RBC 2.28×106 /mlHb 7.4 g/dlHct 22.0%、Plt 205×103 /mlTP 6.5  g/dlA/G 1.6LDH 453 IU/lALP 346 IU/lBUN 37.0 mg/dlCrea 3.5 mg/dl、尿蛋白陽性。 

 

【骨髄検査】

NCC 1.7×104 /mlMgK 0 /ml、異常リンパ球  30.4  【病理所見】鼠径部リンパ節生検では濾胞様結節を構成する小型異型細胞の増殖を認め、濾胞性リンパ腫と診断された。腫瘍細胞は、bcl-2 陽性、IgD 陰性であった。

【経 過】初診時より腎機能低下、尿蛋白陽性のため、尿中蛋白分画、尿・血清免疫電気泳動を施行。尿 BJP-λ型陽性、血中 IgD 825 mg/dlと異常高値を示した。化学療法に反応し、腎機能の改善がみられた。

 

【考 察】

骨髄腫様の症状を認める濾胞性リンパ腫を経験した。悪性リンパ腫に伴う免疫グロブリンの増加はしばしば認められるが、M蛋白の出現は稀である。B-cell 系細胞の分化過程を 考える上で興味深い症例と思われた。

 

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