第37回関東甲信地区医学検査学会 2000.10.14-15

電気ポットを用いた抗原賦活の検討

 

○古谷津純一 喜納勝成 岡崎哲也 中村博
 川畑貞美(順天堂大学浦安病院)
 鈴木清 (サクラ精機株式会社)

 

【はじめに】

免疫組織化学的染色をパラフィン切片を用いて実施する場合、使用抗体により前処理が必要であり、近年では高温処理することで抗原の賦活化を計る方法が注目されている。この方法には、マイクロウエーブ(MW)処理やオートクレーブ(AC)処理をはじめ様々な方法が用いられているが、高価な器材が必要であり、MW法では処理中に賦活液の補充,AC法では処理に長時間を要するなど未だ問題が残されている。今回我々は家庭用電気保温ポット(EP)を用いた抗原賦活法を考案した。各方法の比較検討結果を報告する。

 

【材料と方法】

日常的に免疫染色の依頼される抗体のうち抗原賦活の必要とされている抗体について、電気保温ポット(PLK-25BL,東芝)を用いた抗原賦活法について以下の検討を行なった。

@電気保温ポットの経時的温度計測:熱電対温度計を用いた抗原賦活液(クエン酸緩衝液pH6.0)の温度計測。

A抗原賦活効果の比較検討:MW(MI77MW照射装置,東屋医科機械)およびAC(TCS-1820型卓上オートクレーブ,サクラ精機)との抗原賦活効果の比較検討。

 

【結果と考察】

今回使用した電気保温ポットでは、染色バットに入れた抗原賦活液の液温は約97℃で安定し保温状態となる。染色バット中の約20℃の抗原賦活液を97℃まで上昇させるには、ポット内の水温を約20℃より開始した場合約20分を要し、ポット内水温をあらかじめ上昇させておくと、染色バット内緩衝液温は約15分で安定した。抗原賦活効果は用いる抗体により差があるものの、おおよそACEPMWで、今回検討した電気保温ポット法は、廉価・簡便・安全であり、日常免疫組織化学的染色の抗原賦活方法として有用であると考える。

連絡先 047(353)3111()3310