第37回関東甲信地区医学検査学会 2000.10.14-15

エコー上粘液腫と考えられた左房内血栓の一例

 

○池田和典、牛込雅彦、倉持しづ香、立原政徳、石川淳、郡司則雄、     
寺門陽子、飯島謙二、高野友丈(国立療養所晴嵐荘病院 研究検査科)
梶原 光嗣(同循環器内科)、斎藤 武文(同内科)

 

【はじめに】

血栓を認めた際の治療としてヘパリン、ワーファリンが用いられるが、薬剤使用後の血栓形態に関する知見は少ない。今回我々は、経過中に血栓の形態が変化し粘液腫との鑑別が困難であった症例を経験したので報告する。

 

【症例】

63歳、男性、平成124月に腹痛のため救急病院を受診、徐脈及び心拡大を認めたため当院受診。

 

【入院時現症】

血圧154/82mmHg、心拍数42/分、左第3肋間胸骨左縁に灌水様雑音、心尖部に収縮期雑音。胸部X線写真にて心胸郭係数比56%。心電図は心房細動を認めた。

 

【入院時経胸壁心エコー所見】

左心機能は正常。軽度の僧帽弁および大動脈弁逆流と左房の拡大、及び左心耳近傍に径23mmのボール状血栓を認めた。

 

【経過】

左房内構造物を血栓と診断し、ヘパリン静注後ワーファリン投与を開始した。投与開始後再度経胸壁心エコーを行ったところボール状血栓は消失し、左心耳から僧帽弁にかけて径5mm程度の先端が逸脱しかけている索状構造物を認めた。構造内エコーの輝度は高く不均一であった。粘液腫の疑いもあり経食道エコーを行ったところ、左心耳から派生し僧帽弁口に嵌頓しかけている索状構造物エコーを認めた。この構造物の根部周辺には血栓が存在していた。緊急手術を施行したところ、経食道エコーの所見通り左心耳に茎を有す径5mm、長さ45mmの索状構造を認め、一部は白色血栓化していた。

 

【結語】

血栓溶解療法中に形状の変化した左房内血栓の一例を経験した。本症の診断に経食道エコーが有用であった。

 

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