第37回関東甲信地区医学検査学会 2000.10.14-15

気管支肺胞洗浄が診断に有効であった肺悪性リンパ腫の一例

 

○飯島謙二、牛込雅彦、池田和典、倉持しづ香、立原政徳、石川淳、郡司則雄、
寺門陽子、高野友丈(国立療養所晴嵐荘病院研究検査科)
岡野哲也、斎藤武文(同内科)深井志摩夫(同外科)
森下由紀雄(筑波大学臨床医学系病理)

 

【はじめに】

気管支肺胞洗浄(BAL)術は、肺の病変局所から直接材料を採取できる上、BALによって得られる液性成分や細胞成分に関する知見が増加してきたことにより、その臨床的意義が高まってきている。今回我々は、細胞分画を目的に提出されたBAL液により診断し得た悪性リンパ腫の一例を経験したので報告する。

 

【症例】

66歳、男性。平成121月より咳嗽、膿性痰出現。225日近医受診、胸部X線で異常陰影を指摘される。321日当院外来受診、胸部X線上右肺門部に腫瘤影を認め、327日、精査目的にて入院となる。喀痰細胞診及び気管支鏡下肺生検が施行されるが腫瘍細胞を認めず、58日再度気管支鏡を施行。採取されたBAL液細胞分画検査で悪性リンパ腫が疑われた。同時に採取された生検材料で悪性リンパ腫と診断された。

 

【細胞所見】

血性背景に、成熟リンパ球や組織球とともに、やや大型のatypical lymphoid cell を多数認めた。細胞質は乏しく好塩基性、類円形核で、1〜数個の明瞭な核小体を認めた。

 

【組織所見】

成熟リンパ球よりやや大型で、一部核形不整、ないし核小体明瞭な lymphoid cell が密に増殖・浸潤していた。これらの細胞の免疫組織化学的所見はKeratin(−)、LCA(+)、L26(+)、UCHL1(−)であった。以上より、malignant lymphoma,B cell type と診断された。

 

【まとめ】

今回報告した症例は、肺門部の悪性リンパ腫であったが、喀痰細胞診では有意な所見が得られず、BALがその診断に有効であった。

 

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