第37回関東甲信地区医学検査学会 2000.10.13-14

検査室の(再)構築について
‐「検査室・家計簿」を中心に‐

川畑 貞美 (順天堂大学浦安病院・検査科)


 私たちが技師としての教育を受けた時代(多くは2年生の技師学校)は技師不足であり当時、だれが就職難の時代を予想できたでしょうか? 促成栽培のごとく多くの技師が輩出された時代です。そして今、その年代の技師が検査室のリーダーになっています。「リーダーとは何を……?」 の問いに、言葉で表せば「検査室の管理・運営を行う」 とでもなるのでしょう。それでは「どのように行うのでしょうか?」 学校でも教わらず、職場でも検体測定に追われ、また、過去の慣習に従い、ただ時間だけが経過したように感じるのは私だけでしょうか? いまだに自問自答して苦慮しています。「検査室の(再)構築について」と題し、私たちが行ってきた軌跡をたどり、皆さんの批判を仰ぎたいと思います。

 必要に迫られて検査室の収支に関心を持ったのは病院を開設したころである(約17年前)。一般的に当時は技師1人当たりの処理件数・点数の報告はなされていたが、支出に関する報告はほとんどなく収支差益が不明であった。検査室の(再)構築でイニシアチィブを取るためにはどうしても正確な収支分析に代表される科学的管理が必要であった。このような概念が欠如すると周囲の思惑に左右され不本意な構築となり、将来大きな禍根を残すこととなる。しかし、検査室の中で「変わりようがない」「現状が楽である」「技術・知識の習得に固執したい」などの抽象的概念・固定観念が存在し障害となっており、そこからの脱却も必要であった。そのためにはスタッフ全員で 1、現状の把握(調査)2、問題点の洗い出し(解析)3、改善策の提案とタイムスケジュールの設定(立案)4、勇気を持って実施(実践)5、未来への継続(考察・反省)のプロセスが必要である。この中で最も大切なことは{勇気を持って実施すること(実践)}と考えている。
1、 収支分析
 収入は検査室単独で作成したものではなく、病院にいくらの収益をもたらすかが重要でありレセプトから求めるべきである。平成11年度の収入は病院全体の医療収入に対して11.0%を占めており、その内訳は実施料(60%)、判断料(22%)、外注検査(15%)、検体検査管理加算(2%)、病理診断料(1%)である。支出の内訳は委託費{外注検査委託費と和光・バイエル社への支払い費用を含む}(42%)、人件費{正規職員と準職員を含む}(31%)、消耗品費(25%)、検査査定減額と光熱・水道費(それぞれ1%)である。尚、人件費は源泉徴収を元に算出したものであり、また、光熱・水道費は床面積の割合から算出した。粗利益率は46.6%である。尚、平成11年度の業務実績は院内処理件数:189.3万件/年(15.8万件/月)、外注依頼件数:5.9万件/年(4.915件/月)である。
2、 各種消耗品の管理
 各種消耗品・試薬の管理はクラヤ薬品で開発したクラヤ・オーダーリング・システム(KOS)を用いて実施している。このシステムを導入した当初はスタッフに「何で技師がやらなければならないのか? 事務員がやるべきだ? 本来業務と異なるのではないか? 」など、戸惑いと不満が充満し、かなりの抵抗があった。粘り強く導入する必要性を説き、とりあえず導入に踏み切った。現在では大きな不満もなく推移している。また、スタッフのコスト意識の高揚に繋がったのではないかと考えている。
3、 準職員(パートタイマー職員)の活用
 一般的に、準職員には簡単で単純な業務を行わせる傾向があるが、当検査科では学会発表や臨床病理2級試験の細菌検査士、病理検査士、細胞診スクリーナーの資格を取得した技師もおり、より責任のある業務も任せている。
4、 宿・日直業務再考の一例
 従来、宿・日直業務は多くの施設で実施されている項目を、一般的に採用する検査室が多かった。冒頭で「抽象的概念」「固定観念」からの脱却が必要であると述べた。その実例として当検査室における血液培養導入のプロセスを紹介する。急激な科学の進歩や目的の異なる医療施設では、採用される項目に差異のあることは当然であり、血液培養導入はあくまでも、当検査室の例としてご承知置きいただきたい。
5、 検査室内卒後教育の継続
 卒後教育委員会の企画・立案により毎週火曜日を勉強会に当てている。朝8:10〜9:00までの抄読会、夕方17:00〜19:00までの各種勉強会および、月一回のCPC(Clinical Pathological Conference)への積極的な参加など、全て火曜日に集中させている。


 IT革命など新世紀を迎えるに当たり意識改革の必要性が問われている。IT関連の多くのツールが開発され統計処理、情報収集などは容易になった。検査室の(再)構築を行う場合大切なことは、過去の慣習にとらわれずこれらのツールを効果的に利用し、精度の高い収支の分析に代表される科学的管理への移行であると考える。
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