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液状凍結管理血清の溶解直後からの臨床化学データの変化  

○中川京子、小野香織、真々田賢司、伊藤順子、大澤 進、野村文夫(千葉大学医学部附属病院検査部)、長谷川典子(日本バイオラッドラボラトリーズ(株))

【目的】臨床化学検査の精度管理用の試料は、凍結乾燥試料と凍結試料が用いられている。凍結乾燥試料は、試料の溶解液の温度や溶解から測定までの時間が測定値に影響する事が報告されている。しかし、凍結試料は溶解条件があいまいなものが多く厳しく規定されているものが少ない。そこで今回我々は、溶解条件を変えた液状凍結管理血清の溶解直後からの臨床化学データ(酵素項目)の変化を調べたので報告する。

【機器と試薬】検討を行った試料は、日本バイオラッド社製リクイチェックTおよびUで以下の条件により管理血清を溶解後、溶解直後から24時間経過後の酵素9項目の変動を確認した。管理血清の溶解条件は、1)水道水(9℃)で溶解、2)37℃の温水で溶解、3)室温(25℃)で自然溶解、4)前日から4℃の冷蔵庫へ入れ自然溶解である。また、溶解後の保存条件を冷蔵と室温とした。酵素9項目の測定を行った機器は、日立7600-210形自動分析装置で、当検査部の日常検査用試薬を用い酵素項目の測定条件はメーカー指定に従った。

【結果】経時的な変化は、従来報告されている通り室温保存下でのALPとCKの安定性が悪く、その活性値のそれぞれ著明な増加と減少を認めた。特記すべき点は、溶解直後のデータである。異常域試料を水道水で溶解後直ちに測定した場合と、30分経過後に測定したデータとを比較すると、9項目で93.3〜97.6%の活性しか示さなかった。

【考察および結語】管理血清の使用方法を確認すると、溶解・使用方法の詳しい記載のないものも多い。多くの施設では、流水で溶解後しばらく時間をおき管理試料の測定を行っていると思われる。しかし場合によっては、流水溶解後ただちに測定を行わなければならないこともある。その場合、特に水温が低い時に酵素が十分な活性に戻らないことがあるので注意する必要がある。      (連絡先 043-226-2328)