戻る

過固定による免疫染色への影響 

◯花見 恭太、小山 芳徳、松永 江利子、安達 純世、小野寺 清隆、牛木 志保、麻生 晃(帝京大学市原病院病理部)

今回我々は免疫染色におけるホルマリン固定時間と各抗体の染色態度、賦活化処理との関係について検討したので報告する。

【方法】1年前、6ヶ月前、1.5ヶ月前に提出され、20%緩衝ホルマリンにて保存されている大腸癌の症例を材料として用いた。新たに各材料より標本を切り出しパラフィンブロックを作成し、これを過固定標本とした。また、ルーチンに作成したパラフィンブロック(固定時間1〜3日)をコントロールとして用いた。使用抗体はMIB-1、Vimentin、Keratin(AE1/AE3)、keratin(CAM5.2)、CD34、L26、UCHL-1を用いた。自施設で設定している抗原の賦活化処理を行った後、1次抗体反応、LSAB2キット(DAKO社)にて検出、DAB発色させた。

【結果】Vimentinは賦活化処理を行わない場合には過固定により抗原性の失活が見られた。しかしマイクロウェーブ(MW)による賦活化処理を行うことにより抗原性の回復が見られ良好な結果が得られた。MIB-1はMW処理では過固定になるにつれ抗原性の失活が見られたが、より強いオートクレーブ(AC)処理により良好な結果が得られた。CD34はMW処理を行っても過固定により抗原性の失活が見られた。AE1/AE3は過固定標本でコントロールに比較し全体的に染色性が弱かった。L26、UCHL-1 、CAM5-2では過固定標本においても良好な結果が得られた。過固定標本においても賦活化処理を行うことにより抗原性の回復が見られるものがあった。自施設では通常、各抗体に適した賦活化処理を設定し行っているが、過固定により賦活化処理を行っても抗原性の失活が見られるものがあり、適切な処理を行う事が必要と考えられた。更に短期間での固定時間の違いによる検討、考察を加えて報告する。