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乳腺原発腺様嚢胞癌の一例 

○鎌田由美子、大場雄一、滝沢 朗、酒井和之、宍倉由里(千葉徳州会病院)、高橋年美(千葉市立海浜病院)

はじめに: 乳腺原発腺様嚢胞癌は全乳癌の0.1%と極めて希な組織型である。組識学的patternはcribriformの他にtubularやbasaloid typeがある。今回我々は粘液球を囲む篩状構造の明らかでない腺様嚢胞癌を経験したので報告する。症例:34歳、女性。左乳房腫瘤の自覚症状があったが、平成9年、平成10年の検査では乳腺症と診断された。平成11年、腫瘤は増大し触診およびMMGで乳癌と診断され、精査のため当院紹介となった。血液、生化学的検査および腫瘍マーカーには異常を認めなかった。超音波検査にて左C領域に4×2cmの辺縁不整で内部に微小石灰化を伴うlow echonic腫瘤を認め、穿刺吸引細胞診を行ったところ悪性と判定され乳房切除術および再建が施行された。

穿刺吸引細胞診:重積の強い集塊が採取されており、核は小型類円形、裸核状でクロマチン細顆粒状であることから悪性を疑ったが、細胞が一般的な乳管癌に比較し小型であるため、浸潤性小葉癌、小細胞癌、腺様嚢胞癌などを考えた細胞像であった。

組織所見:腫瘍は硝子化した間質に大〜小、整〜不整な胞巣が浸潤増殖する像を主体とする。胞巣のほとんどが充実性で構造分化を示していないが時に偽腺管や小型の腺管を含む。腫瘍細胞は胞体に乏しく核は小型の上皮および筋上皮の細胞から構成されていた。

考察:本症例の細胞像では小型均一な悪性細胞が主体を占めた像であり、腺様嚢胞癌に典型的とされる粘液球を含む篩状構造の所見は明らかでなかった。