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APL症例におけるFISH法の応用とATRA療法による細胞の形態学的変化について 

○林 裕子、竹下 理恵子、山本 修一、児玉 明好、畠山 靖子、高木 春枝、大山 正之、菊野 薫、野村 文夫(千葉大学医学部附属病院検査部)

<はじめに>我々はルーチン検査で、ATRA療法中のAPL患者の末梢血液像中に単球様異型細胞を認めた。この単球様異型細胞の帰属を明らかにするために特殊染色と、塗抹標本によるFISH 法も施行した。さらに最近骨髄球系の白血病細胞にNK細胞のマーカーであるCD16、CD56陽性例が見られるとの報告もあるため、他の2例のAPL患者も加えてフローサイトメトリーにて検討した。

<方法>普通染色はPappenheim染色、エステラーゼ染色は基質としてα-naphthyl butyrateとnaphthol AS-D-chloroacetateを用い、ペルオキシダーゼ染色はMcJunkin法で行った。また、フローサイトメトリーは3カラー法(CD45SSCゲーティング)を用い、FISH法は秋田大学のプロトコールに基づき塗抹標本で行った。[症例1]52才男性、1999年10月発症。初診時は、WBC 2.0×103/μl、RBC 3.01×106/μl、Hb 10.5g/dl、 PLT20×103/μl、Fbg 106mg/dl FDP 97μg/dlであった。また、遺伝子検査でt(15;17)転座があり、ATRAと化学療法を併用した。[症例2]45才女性、1999年6月発症。初診時は、WBC 0.5×103/μl、RBC 1.81×106/μl、Hb 5.5g/dl、PLT 30×103/μl、FDP 25.9μg/dlであり、ATRAにて治療を開始した。

<結果・考察>単球様異型細胞を認めた症例1に対して、エステラーゼ染色を行った結果、butyrate染色陰性、AS-D-chloroacetate染色陽性、ペルオキシダーゼ染色強陽性であり、APLの白血病細胞由来である可能性が示唆された。また、初診期のFISH法ではt(15;17)転座が確認され、施行した4例中2例でNK細胞マーカー陽性であった。

<まとめ>ルーチン検査で鑑別不可能な細胞が末梢血液像中に出現した際には、特殊染色が有用であった。また、遺伝子レベルで治療をモニタリングできるFISH法は有効であると思われた。