第22回千葉県臨床衛生検査学会抄録(平成13年2月11日開催)



ヘリコバクターピロリ除菌とペプシノゲン法に関する臨床知見

〇佐藤桂子 尾川隆祥 杉野克彦(和光純薬工業株
 式会社)飯塚美伸(福島県立会津総合病院内科)

【目的】Helicobacter pylori(以下H. pyloriと略す)の存在と血清ペプシノゲン(以下PGと略す)の各種疾患における両者の関係、及びH.pylori除菌前後の変化等について検討し、若干の知見を得たので報告する。
【方法】H. pylori検出は培養法、鏡検法、迅速ウレアーゼテスト、抗体法で行い、前3法のいずれかが陽性をH. pylori陽性、3法すべて陰性を陰性と判定した。また、抗体法は2.3 EV以上を陽性とした。PGの測定は化学発光酵素免疫法(スフィアライト180)で行い、PGT≦70ng/mlかつT/U比≦3以下をPG法陽性とした。なお、H. pyloriの除菌法は、CAM、AMPC、PPI常用量を2週間投与するNew Triple Therapy で行った。
【結果】1)H. pyloriとPG法との陽性率は加齢とともに増加傾向を示した。
2)H. Pylori陽性群ではPGT,PGUは高く、PGT/U比は低かった。
3)PG法陽性かつH. pylori陰性群では胃癌が多く、PG法陰性かつH. pylori陽性群では消化性潰瘍が多くみられた。
4) H. pylori除菌成功例では、除菌後PGT,PGUは低下、 PGT/U比は逆に上昇したが、除菌不成功例では除菌前後で一定の変化はみられなかった。
【結論】以上のことから、H. pylori検出とPG法測定、両者の組み合わせは、除菌判定のみならず、現在の胃粘膜の状態をよりよく把握できる良い方法と考えられる。    連絡先 03-3270-9132
「ARCHITECT・Anti−HCV」の基礎的検討

○ 坂元美智代 羽田真理子 北村登 清宮朋子
  山本麻弓 麻生裕康
 (千葉県がんセンター臨床検査部)

【目的】化学発光免疫測定法(CLIA法)を原理とする、「ARCHITECT・Anti-HCV」について基礎的検討を行ったので報告する。
【方法および結果】@同時再現性:3濃度の自家製プール血清および専用コントロール試料を連続20回測定したところ、CVは1.88〜4.96%であった。A日差再現性:上記の試料を2週間測定したところ、CVは2.69〜6.67%であった。B従来法との相関:当センター患者血清を試料とした。従来法であるELISA法(HCV Ab ELISA テストV;オーソ社)において陰性を示した血清101例での本法との一致率は98.0%、陽性血清61例での一致率は96.7%であった。また、ELISA法にてカットオフ値付近の値を示した20例中の10例に判定結果の乖離を認めた。全182例における一致率は92.3%となった。乖離例の多くは本法低値陽性、ELISA法陰性であった。CHCV-RNAとの関連:本法陽性の患者血清40例について、HCV-RNA定量を行った。 S/CO(検体のRLU/カットオフRLU)8.1以上の7例中の6例がRNA陽性であったが、S/CO 8.0以下の33例中のRNA陽性例は1例のみであった。
【考察】本法の再現性は良好であった。ELISA法との相関では判定結果の乖離例を認めたが、その多くはS/CO低値陽性例であった。また、S/CO低値陽性例ではHCV-RNA陽性率が低く、既往感染の占める割合が大きいことが推測された。
【結論】「ARCHITECT・Anti-HCV」は良好な再現性と迅速性により、日常検査において大変有用であると思われた。しかしながら、本法以外の他の測定法に比べて、カットオフ値の設定が低めであると思われ、これによるものと推測される判定結果の乖離が認められた。HCV抗体検査の陽性基準の統一化が望まれる。     043-264-5431(3751)

制作・著作:社団法人千葉県臨床衛生検査技師会