第22回千葉県臨床衛生検査学会抄録(平成13年2月11日開催)



A3型の一例について

○塚田早苗 山本浩子 長谷川浩子 植田早苗
伊藤道博(千葉大学医学部附属病院 輸血部)

【はじめに】ABO血液型検査のおもて試験で抗A 抗体に対し弱い凝集を示し、A3型と分類された症例を経験したので報告する。
【症例】66歳、女性。胃癌の手術のため当院を受診した。輸血歴なし、妊娠歴あり。本人への問診により双生児でないことを確認。
【方法および成績】ABO血液型検査のおもて試験で抗A抗体に凝集出現が遅く、かつ、mixed field agglutination(以下mfとする)を呈し、抗B抗体に(-)、うら試験ではA1-RBC(-)、B-RBC(4+)とA型の亜型が疑われ、精査を実施した。赤血球の検査:抗A抗体では動物由来、ヒト由来、モノクローナル由来(以下モノとする)いずれも(+mf)、同種の抗B抗体にはすべて(-)、O型血清には(+mf)、抗A1レクチン(-)、抗Hレクチン(4+)、モノ抗H抗体(4+)、吸着解離試験ではA抗原が証明され、抗A抗体での患者血球の被凝集素価は(患者血球/A1:×64/×512)、また、Flow-Cytometryでは抗A抗体に対する陽性率は7.7%と低かった。凝集抑制試験を用いた唾液中の型物質の検出ではH抗原と、痕跡程度のA抗原を検出した。血清の検査:抗B抗体価は×256、不規則抗体スクリーニングは(-)、ガルサーブを用いた検査ではA-transferaseは検出できなかった。なお、患者血球とAB型血漿による測定では患者血球はO型血球と同等に型転換された。その他の主な血液型も検査したがmf等の異常な反応はみられなかった。以上の結果よりA3型と判定した。
【まとめ】亜型は抗原の性状に異常がある為、凝集反応が弱かったり、凝集開始が遅延したりする。日常業務での注意深い観察の重要性を再認識した。また、A-transferase活性は、亜型ばかりでなく、血液疾患や胃癌で減弱するとの報告もあり、本症例の場合が、本来の血液型によるものか、疾患によるものかは、今後さらに検討が必要と考えた。

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制作・著作:社団法人千葉県臨床衛生検査技師会