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AMLの腫瘍細胞が脳浸潤を呈した一例

○湯浅紀子 佐藤正一 小池修司(千葉県救急医療センター)

【はじめに】 急性骨髄性白血病(AML)の腫瘍細胞が各種臓器に浸潤する事は知られている。今回我々は、FAB分類のM4と思われる症例が脳浸潤を呈し、急激な臨床経過を示した一例を経験したので報告する。

【症例】 22歳、男性。平成14年2月歯痛と軽度の頭痛を自覚。3月末39度の発熱にて近医を受診。3月30日A大学病院の救急外来を受診し、抜歯を薦められた為4月2日近歯科医にて抜歯。その後も歯肉出血・微熱・頭痛が持続した。4月20日B歯科大学病院に救急車にて搬送され血液検査を実施。白血病が疑われ、激しい頭痛を訴えている事から当センターへ転院となった。

【入院時検査所見】〈血算〉WBC 340×103/μl・RBC 2.35×106/μl・PLT 47×103/μl〈血像〉Blast 92%・E.Blast 2%〈生化学〉LDH 1956IU/l・CRP 2.1mg/dl〈頭部CT〉左後頭葉に5×5cmの陰影。

【臨床経過】入院時の検査実施中、呼吸停止状態になった。除細動器にて呼吸は復活したが、聴性脳幹刺激で?波までの出現であったため保存的治療となった。4月25日深夜、突然血圧が低下し永眠された。

【結果】 死亡後、骨髄穿刺と頭部の剖検を実施した。骨髄穿刺では有核細胞数84万/μl、巨核球数220/μl、FCMはCD 7・13・33・34・HLA-DRが陽性。染色体検査は21のトリソミーが17/20細胞であった。剖検所見では脳全体に軟化、出血、浮腫が認められた。

【まとめ】 M4で白血球数が340×103/μlと高値となり、症状の自覚後約2ヶ月で脳浸潤を呈し、他臓器への浸潤も疑われるものであった。この症例により初期の血球算定、血液標本の鏡検がいかに重要なものか改めて感じた。

043-279-2211(430)