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フローサイトメトリー法による白血球表面抗原解析における検体保存の影響

○高田浩子 山本雅彦 降旗麻子 仲沢正美 松林恵子 麻生裕康(千葉県がんセンター臨床検査部)

[目的]フローサイトメトリー法(以下FCM法と記す)による白血球表面抗原解析では、患者より採取された検体は通常24時間以内に検査することが望ましいとされているが、日常の検査室業務では時間外に提出された検体への対応が困難である。そこで今回我々は、検体保存による測定値の変化を観察し、検体の長時間保存が与える解析結果への影響と保存液使用の可能性について検討を試みた。

[対象と方法]健常人および血液腫瘍疾患患者から採取されたEDTA加末梢血または骨髄血を用いた。保存液として4%ヒトアルブミン加CP-1液ならびに10%FCS加RPMI液を使用した。Coulter Epics XL (Beckman Coulter)を使用し、検体提出より8時間以内のEDTA加検体をFCM法にてパネル解析を行い、これを対照として72時間冷蔵保存後の検体検査結果と比較した。

[結果]血液細胞表面マーカーの個々の抗体で陽性率を比較した場合、保存前後での著明な変化は見られなかった。しかし、FS(forward scatter)とSS(side scatter)による解析では、72時間保存した検体では、採取直後の検体に比べCP-1、RPMIを添加した検体においても、共に白血球細胞集団の低下が見られた。同様にCD45とSSを使用した解析では、目的とする腫瘍細胞のゲート領域からの逸脱と、顆粒球、単球のドットプロットの分散やdebrisが増加する傾向が見られた。一方、検体の溶血・固定操作を抗体と反応させる前に行った状態で保存し、後から染色する方法を用いた場合には、白血球細胞の集団は保存液のみを使用した場合と比較しても変化が軽減され、安定した結果が得られた検体もあることから、この点についても更に症例を加えて検討し報告する。

043-264-5431