症例問題 解答・解説
<超音波像>
大きさ15.4×10.6×8.4mm程度の辺縁不整、境界不明瞭で内部エコー不均一な腫瘤様病変を認める。音響陰影や後方エコー変化は明らかではない。エコー像からは悪性腫瘍を否定しえない所見である。
<細胞像>
背景に組織球・リンパ球・コロイドを伴い多核巨細胞がみられる。多核巨細胞は、核数が50個を越える大型のものが多く出現している。又類上皮細胞、変性顆粒様のものをもつ濾胞上皮の集団、肉芽組織様の線維化を示唆する集団がみられる。核内細胞質封入体、大型で異型の強い濾胞上皮細胞・リンパ球などの所見は認められない。
<解答>
5: 亜急性甲状腺炎
<解説>
肉芽腫性甲状腺炎とも呼ばれ、ウイルス感染によると考えられている説があるが、いまだ不明である。臨床的主症状は発熱、倦怠感、甲状腺の圧痛である。数ヶ月で自然寛界する。本症例も自然治療の経過を辿った。
甲状腺は変則性の腫大をきたすことが多く、結節性甲状腺腫の像を示すことがあるため、穿刺吸引細胞診が有効である。
核数50個を越える多核巨細胞(慢性甲状腺炎の多核巨細胞は30個未満。乳頭癌にみられる多核巨細胞は、慢性・亜急性甲状腺の中間の大きさのものが多い)類上皮細胞、組織球、小リンパ球、濾胞上皮変性顆粒などの組み合わせが診断の要点である。
ホームページで公開している文章や画像などの著作権は社団法人千葉県臨床検査技師会に帰属します。
これらの文章や画像を社団法人千葉県臨床検査技師会の承諾なしに複製、他の電子メディアや印刷物などに再利用することはできません。