症例問題・解答

解答
 4.浸潤性微小乳頭癌
<細胞像>
 腫瘍細胞は小球状集塊で出現する小~中型の細胞である。核クロマチンは細顆粒状で密に増量し、細胞集塊辺縁はけばだち状で核の飛び出しは少ない。
<病理組織診断>
Invasive micropapillary carcinoma(以下IPMC)
TNM:T1N0M0,stageⅠ
<病理組織所見>
 腫瘤径は20x15x20mm、割面は淡褐色で充実性に増生する腫瘤で、組織学的に薄い間質で区切られた腔内に、腫瘍細胞が血管茎を伴わない小乳頭状の癌胞巣を形成している。
免疫組織化学的にIMPCでみられる小乳頭状集塊はEMAが胞巣辺縁に陽性となり、細胞極性が逆転し細胞表面が胞巣の外側に存在することが示唆される。
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Photo.1 マクロ像 (←矢印が腫瘍部)
Photo.2 HE染色 ×4
Photo.3 HE染色 ×20
Photo.4  EMA ×40
<鑑別診断>
 IMPCは細胞異型、核クロマチンの増量、筋上皮細胞を伴わない等の点で良性病変とは鑑別可能である。管状癌は細胞異型が弱く、管状構造を反映した細胞集塊でみられる。乳頭腺管癌は乳頭状や腺腔形成が特徴で、間質の増生はみられず乳頭状構造や篩状構造がみられる。また低乳頭亜型が存在するが、結合性の強いシート状集塊から乳頭状突出する像を反映する点でIMPCと鑑別可能と考える。IMPCは腋窩リンパ節転移が72~77%と高率を示し1)、IMPCの組織内での多寡を問わずIMPCの形態を少量でも有するものは悪性度が高い2)と言われているため、細胞診でその細胞学的特徴を認識し早期に判定することは重要である。
1)Ellis,I.O.,Schnitt,S.J.,Sastre-Garau,X.,Bussolati,G.,Tavassoli,F.A.,et al.:Invasive micropapillary carcinoma. In:Tavassoli,F.A.,Devilee,P.,eds. World Health Organization Classification of Tumours: Pathology and Genetics of Tumours of the Breast and Female Genital Organs.Lyon:IARC Press, 2003;35-36.
2)津曲幸二,坂元吾偉,秋山太,霞富士雄:乳腺のInvasime micropapillary carcinomaの病理診断と臨床意義:乳癌の臨床16(5):441-447,2001

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