第二回
  「パラダイム転換」
企 画 社団法人千葉県臨床検査技師会
協 力
株式会社リクルートマネジメントソリューションズ
HRDソリューションBU コヴィーグループ

我々の直面する重要な問題は、それを作った時と同じ考えのレベルで解決することはできない
−アルバート・アインシュタイン−
  

 第一回は「7つの習慣」の全体像をご紹介しました。今回から具体的な中身を一つ一つ、段階的にご紹介します。

 私たちは、長年の経験に基づいた価値観や考え方、行動を変えることはそう簡単にできません。特に成功体験を積んでしまうと、なかなかそのやり方から脱却するのは難しいようです。取り巻く環境の変化を認識していながらも、以前はこのやり方でうまくいったから、今回も同じようにやればうまくいくはずだ!と考えがちです。でも易々と期待する結果を手にできないのが混沌とした今の時代です。

 さて、タイトル“パラダイム”という言葉ですが、これまで耳にされた方も多いと思います。この言葉は科学哲学者トーマス・クーンが「科学革命の構造」という歴史的な本の中で「科学の全ての突破は従来の伝統、古い考え方、古いパラダイムを放棄することから始まった」と指摘しています。遠い昔コペルニクスが発見した天動説から地動説も大きなパラダイム転換でした。それは新たな世界を拓き科学技術の進歩をもたらしたのです。
 パラダイム転換は何も科学の世界に限ったことではありません。私達が日常抱える問題課題に対しても、ちょっとした思考の枠組みを変えることで、つまりパラダイム転換することで、解決の方向に向かうことは充分可能です。

「7つの習慣」で提唱している【変化のサイクル】(図)に沿ってご紹介します。

『ニーズ』:組織を取り巻く利害関係者のニーズ

『結果』:現在得ている結果、現状、状況

『行動』:結果を齎しているその人(人々)の行動

『システム』:業務プロセス、規制・規則

『パラダイム』:ものの見方、考え方

 まず、皆さんが周囲から期待されていること=『ニーズ』はどんなことでしょうか?その『ニーズ』には十分に応えられているでしょうか?応えられていないとしたら、そのギャップを問題と定義します。その問題を解決する為の最初のアプローチは『行動』です。つまり『行動』を変えることで何らか良い結果を生み出そうとします。次のアプローチは『システム』です。『システム(仕組み)』を入れることで『行動』も変わってきます。日本にQC活動を普及させたデミング博士は言っています。「組織の抱える問題はシステムを変えることで94%は解決する。しかしより大きな変化をもたらすには、『パラダイム』に働きかけなければならない」と。『パラダイム』=“ものの見方、考え方”に働きかけるのが3番目のアプローチです。

 ちょっとおかしな話ですが・・・、〜でも当時は常識!?〜 中世時代のヨーロッパでは、病気の原因(パラダイム)は悪霊と言われていました。そこから生み出されたシステム(治療方法)は悪魔払いです。しかし、病気は一向に治らない、さて・・・、どうしたでしょうか?“ひょっとしたら悪霊ではないかもしれない“とパラダイムを疑ったでしょうか?いいえ、祈りが足らないから治らないのだと、『行動』に働きかけて、日夜問わず熱心に悪魔払いを続けたのです。隣村では大人数で円になって、中央に松明を灯して祈ったらどうやら治ったらしいぞ、と聞けばその『システム』を取り入れました。でも、治らない。祈りの甲斐なく亡くなってしまうと“今回捕りついた悪魔は相当のものだった”と振返る有様。人はパラダイムを疑うことはなかなかしないのです。

 パラダイム転換はそれまで見えてなかった新たな視点をもたらします。時には精神的苦痛を伴いますが、有意義なパラダイム転換を遂げると“ああ、そう言うことだったのか”となります。

 現代の医療現場も時代の流れとともに、たくさんのパラダイム転換が起こっています。たとえば臓器治療の病気中心→患者中心→人間中心へと。それはCUREからCAREへ、そしてQOLへ。

 では臨床検査技師の皆さんの現場は如何でしょうか?先日、臨床検査部門をアウトソーシングする病院も増えていると耳にしました。まさにパラダイム転換しなきゃいけない環境変化に直面していらっしゃる方も多いのではないでしょうか?

 一旦思考の枠組みを取り払い、全く違ったものの見方・考え方をしてみると、新たな世界が拡がり解決の糸口が見つかるかもしれません。

  -------この内容は、フランクリン・コヴィー・ジャパン「7つの習慣」トレーニングプログラムに基づいて表現しています-------


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