第三回
  「インサイド・アウトの組織変革」
企 画 社団法人千葉県臨床検査技師会
協 力
株式会社リクルートマネジメントソリューションズ
HRDソリューションBU コヴィーグループ

 今回は組織変革をもたらすパラダイム転換をご紹介します。

 組織を表すものには組織図があります。一番上が社長、病院では院長?でしょうか。その下に部や課がぶら下がり、そこにはたくさんの人の氏名が載っています。ヒエラルキー型組織を表す象徴的な平面図です。

 「7つの習慣」ではどんな組織(家庭)でもあてはまる組織図を4つの円で表しています。(図:リーダーシップの4つのレベル)

 組織が動いた、組織が利益を生み出した、などと言いますが、組織そのものは動きません。全てはそこにいた【個人】が動いた結果なのです。
 組織の中心は個人です。組織平面図の一番上にいる院長や社長、一番下の新入社員だって、個人です。
 個人と個人が集まれば【人間関係】が生まれます。多くの人が集まると様々な役割が生まれ、それを束ねる部や課が作られます。
 部や課の運営を能率、効率よく推進する為に【マネジメント】が必要になります。
そして全ての部や課の集合体が【組織】です。
 以上を整理すると、個人が集まれば人間関係が生まれ、役割遂行においてマネジメントが必要になり、それを束ねているのが組織、ということです。
 組織を最も望ましい方向に変革し活性化と生産性向上を目指すには、この4つのレベルを“原則”に基づいて最適化する必要があります。
 組織は人と人との協働で結果をもたらしています。その結果は人間関係の状態次第で大きく変わってきます。よって、一番解りやすい人間関係レベルの原則からご紹介します。

■人間関係レベルの原則【信頼】
 私たちの社会生活の全ては信頼で成り立っています。金融機関にお金を預けたり、病気になったら病院に行くのも・・・、それは信頼しているからです。ビジネスでもプライベートでも日常生活において信頼が無かったらどうなってしまうでしょうか?

 さて、組織が抱える様々な問題はコミュニケーションに起因することが多いようです。信頼関係が築けている人同士のコミュニケーションは円滑です。では、その人間関係の原則である信頼はどこから生まれるのでしょうか?

■個人レベルの原則【信頼性】
 人間関係レベルでいきなり信頼がうまれるかというとそうではありません。それはその手前の個人の質次第なのです。個人の信頼性が高ければ人間関係に信頼が生まれるのです。
個人の信頼性の定義を明確にします。
「個人の“能力”と“人格”が高いレベルでバランス取れていること」
例えば・・・、皆さんが社長になったと想定してください。急に経理担当が辞めてしまい、急遽採用しなければならなくなりました。募集をかけたら二人の応募者が・・・。
 一人は簿記一級の資格を持つ知識・経験も豊富な人。しかし前の職場ではどうやら使い込みをして懲戒免職になったらしいと耳にしました。能力は長けているけれど、人格はボロボロ。こういう人にあなたの会社の印鑑や通帳を預けることは出来ますか?
 もう一人はとっても誠実で人からの人望も厚い人。しかし経理の知識はゼロ。減価償却と言ったら“何を燃やせばいいのですか?”と答えてしまうくらいな人。
 さて、どちらを採用しますか?もっといい人はいないのか?というのが本音だと思いますが・・・。ここで皆さんに気付いていただきたいのは、“能力”は“人格”でカバーできない、逆も同じです。つまりお互いに補完しあうことは出来ないと言うことです。人格と能力が備わっている人が信頼性の高い人、ということです。

■マネジメントレベルの原則【エンパワーメント】
 信頼で繋がった人間関係におけるマネジメントスタイルはどうでしょうか?
管理コントロールする必要があるでしょうか?いいえ、それは信頼しているから権限を与え、自由裁量で仕事を任せることが出来ます。マネジメントレベルではエンパワーメント(権限委譲または任用)が可能となります。権限を与えられ、仕事を任せられた部下はやる気が出ます。周囲の期待に応えようと、より一層頑張ります。任せる風土には個々人の主体性も育ちます。

■組織レベルの原則【アラインメント】
 権限を与えられたからといって、個々人が自由勝手に動かれたら困ります。そこで組織レベルでは動いてもらう方向性を明確にするために、戦略やヴィジョンを打ち出します。各人が主体的にその組織戦略に則って、ビジョン達成に向けて貢献するようになります。戦略やビションに人々の行動がアラインメント(一線化)図れていると、組織は確実に、着々と動き出します。

以上、各レベルの原則は全てその内側の質が支配していることをご理解いただけたでしょうか?

 さて皆さんに質問です。これまで組織変革はどこに手を加えてきたのでしょうか?経営状態が思わしくない、どうも方針が伝わらない、ミスが多い、そんな場合は外側の組織やマネジメントレベルに手を加えてきたのではないでしょうか?これをアウトサイド・インのアプローチと言います。具体的には組織変更、部や課の統廃合、方針や戦略の変更、、、などなどの繰り返し。なぜ外側ばかりいじってきたのでしょうか?
それは個人の感情が入らないから、手をつけやすかったのです。
では、それは上手くいったのでしょうか?
いいえ、厳しい結果のようです。

何故うまくいかなかったのでしょうか?

 それは方針や戦略を打ち出しても、マネジメントと人間関係の間にある意識の壁が厚く阻んでいたからです。更に組織の中心にいる個人のパラダイムは旧態依然で、同じ物の見方考え方、そして同じ行動の繰り返し、アウトサイド・インでは中心の個人の意識まで変えることは不可能でした。

 「7つの習慣」では、個人の信頼性向上により、人間関係も変わり、マネジメントでは任し任される風土が醸成され、組織の目指すべき方向に、全員が最大限に力を発揮できるような状態を作り上げる、インサイド・アウトのアプローチを提唱してます。

 アウトサイド・イン=組織変革も、もちろん重要です。でもそれを遂行する個人個人の意識変革=インサイド・アウトの変革も重要なのです。双方のベクトルが一致している状態が組織として最大限のパワーを発揮するに違いありません。

  -------この内容は、フランクリン・コヴィー・ジャパン「7つの習慣」トレーニングプログラムに基づいて表現しています-------


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